くしゃみからの考察

 先日スカイプ仲間の男友達(全盲)が、グループ会議中、何かの話の流れでこんなことを言った。

「俺さあ、好きな人のくしゃみでもどきっとするんだよね」

そう恥ずかし気もなく語る彼を、もちろん否定するつもりはないのだが、私は思った。そう言うものなのだろうか、と・・・。

 だってくしゃみだよ?!くしゃみなんて、日常の中で誰もが1度はするであろうありふれた行為ではないか。そこにいわゆる「萌え」を感じるのだと、その男友達は言うのだ。私は今までそんなことを1度も考えたことがなかった。

 そこで改めて考察してみたいのが、私や冒頭の男友達のように、生まれつき全盲の視覚障碍者は、いったい異性のどんなところに萌えを感じたり、どきっとさせられたりするのかである。

 言う間でもないが、私やさきほどの男友達は、生まれた時から目が見えていないので、「見る」と言うことができない。そのため、相手の顔やスタイルの良しあしと言った、視覚的な情報から、好き嫌いを判断すると言う概念が、初めから備わっていないような気がする。

ようするに、好きな人だろうと、嫌いな人だろうと、見た目はどうでもいいのだ。

 では見た目以外のどう言ったところに惹かれるのか。その多くはたぶん声だろう。女性は「イケボ(イケメンボイス、いやいけてるぼいす?)」の男性に、男性は「カワボ(かわいい声)」の女性に惹かれると言う人が、周りの全盲者の友人や知人たちを見ていても多いように思う。

「じゃあ羽田もイケボな男性が好きなんだな?」と聞かれたら、じつはそうでもない。

 そりゃ確かにイケボな男性の声を聞くと、「あーこの人良い声だなあ」とは思う。でもそこから恋愛的な憧れを抱いたり、性的な感情や興味を持つかと言えば、べつにそうでもないように思う。

 じゃあ私自身、異性のどのようなところに萌えるのだろうか。それはずばり「言葉」だろうか。

 たとえばユーチューブなんかでよく上がっている、イケボな男性声優さんのシチュエーションボイスの甘い囁きにはあまり萌えない。「どうせ2次元でしょう?」と高をくくってしまうのだ。

 でも一方これがスガシカオさんのライブアルバムのmcでの、

「そんな興奮すんなよ。後2時間もあるんだぜ」

と言う観客に向けられた挑発的とも取れるこの言葉には、本当に萌えた。まじで萌えた。

「後2時間も何されるのー?!」

と思い出しただけで悶絶したくなるほどである。

 なんかあまりにもまとまりのない文章になってしまって、読者の皆さんには分かっていただきにくかったかもしれないが、まあそう言うことなのだ。

 ようするに、生まれつき全盲の視覚障碍者は、相手の見た目ではなく、声や言葉、そしてそれらを含めての人間性を、晴眼者以上によく見ているのかもしれない。そして、恋をした時は、お互いにそう言ったところに惹かれあっていくのだろう、きっと。

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