第4話 タマル村の怪 その1

スキアからの依頼内容はこうである。

最近、この村の人間で魂が天に来ないものが複数いるらしい。

対象がハンターであれば難しいクエストに次々に失敗する事もあるから珍しいことではないが、今回は老若男女問わないことから事情が異なりそうだ。

あまり村から出ない子供や年寄りが行方不明になるのは珍しい。

この村に猟奇連続殺人でも起こったのだろうか?

小さな村では殺人事態もあまりないので、今回の失踪は謎が多い。


「では、行方不明者の調査と魂の回収をすれば良いんですか?」

「それで問題ない。

現状、判明している詳細はこの資料に書いてある。

良い報告を期待している」


こう言ってスキアは立ち去っていった。

私は残された資料に目を通す。


最初の行方不明者が1か月前

20代の青年で近くの川へ釣りに行ったまま行方不明

次は3週間前

最初の青年の近所に住む元ハンターの老人。一人暮らしのため詳細は不明

3人目は2週間

9才の女の子で遊びに行ったまま行方不明

4人目は1週間前

30台のハンターの男性で酒場を出たまま行方不明


最初の二人は関連性が無くもないが、それ以降は不明だ。

一週間毎に発生しているのは何故だろう?

ディープシーターであれば村にもっと被害が出るだろうし、目撃情報も出そうだ。

子供は村から出ることは無いことからやはり誘拐や愉快犯かもしれない。

村の中には残滓が多すぎて追跡は無理だ。

さて、どうしたものか?


考えてても良い案は浮かばないので、村人から聞き取りをする事にした。

まずは最初の青年の家から行くか。


青年の家は長屋のように同じ形の家が並んでる中にあった。

ドアをノックすると若い女性が出てきた。


「はい…どちら様でしょうか…?」

「私はハンター家業をしていますステラです。

こちらにお住まいのジャックという青年のお話を伺いたいのですが?」

「捜索のクエストを受注頂いたハンターの方ですね…。

私はジャックの妻のステイシーです。

どうぞ、おあがりください」


男性の妻を名乗る女性の案内に従い居間に通された。


「ご主人は釣りに出掛けられたそうですね?」

「はい…その日は仕事が休みでしたので、趣味の釣りに出かけました。

いつもなら昼過ぎには帰ってくるのに、それきり帰ってくる事がありませんでした…」

「誰かに恨まれるような事はありましたか?」

「…真面目だけが取り柄のような人でしたので…特には」

「ご主人は魔物と戦ったことは?」

「護身用のナイフは持ってましたが一度も…」

「襲われた痕跡はありましたか?」

「川原に釣り道具が見つかりましたが、他には何も…川に流されたのではないかと他のハンターがおっしゃっていました」

「時間も経ってますので生きてる可能性は低いですが出来る限り探してみます」

「宜しくお願いします…せめて遺体だけでも見つけて頂ければ…弔いたいと思います…」


1ヶ月は経過しているが妻のステイシーは落ち込んだままだ。

最愛の夫がなくなったのだ当然だろう。

若い夫婦でこれからが楽しくなるときだったのだろう。

高校生のお前が結婚の何を知ってると思われるだろう。

この世界では現代の日本より生きることが難しく死と隣り合わせだ。

その中では結婚とは最大のイベントで幸福の絶頂だ。

その夫や妻の死を何回も目の当たりにした。

その度に後を追ったり、死人のようになったりと愛情の深さを重い知る。

今の日本にそこまで配偶者を愛してる人がいるだろうか?

残された者と話をすると心が重くなる。

気晴らしに近所の人に聞き込みをしてみよう。


ちょうどおばちゃん達が立ち話をしていたので声を掛けてみた。

聞きたいこと以上の10倍くらいの話が帰ってきた。

はっきり言って疲れた…。

どれだけ話好きなのだろう、誰と誰が不倫しているとか関係ない知識が満載だ。

必要な箇所を纏めると


夫婦の仲は良くケンカは無かった

ジャックは良い人で恨まれるような事はない

二人目の行方不明である老人は隣に住んでいた

この老人はハンター時代は腕が良かった

老人の妻は数年前に失くなっている

ジャック夫妻を孫のように可愛がっていた


と、いったところか。

これだけ聞くのに2時間以上捕まった。

とりあえず休憩をしよう。


広場の木の下で休んでると子供達が遊んでるのが見えた。

女の子の事を知ってるかもしれない。

小さな村では子供もそんなに多くはない。

年頃が同じならその日も一緒にいた可能性は高い。


「ねえ、君たちハンナちゃんを知ってるかな?」

「おねえさん、だれ?」

「すげえ、きれいだ」

「お世辞なんてませてるのね。

私はステラ、ハンターをしていて行方不明のハンナちゃんを探してるの」

「ハンナちゃんみつかるの?」

「小さいころからいっしょだったから、よくしってるよ」

「じゃあ、いなくなった日の事を詳しく教えてくれるかな?

色々教えてくれたら見つかるようお姉さん頑張るよ!」


子供達の話ではその日も一緒に遊んでいたらしい。

この広場で夕方まで遊び家に帰ったようだ。

家の方角が一緒の子と帰り、その子の家の前で別れた。

そこから家まで200mくらいだ。

その間で行方不明になったようだ。

これは普通に誘拐事件で他とは関係ないのでは?

全く訳が分からない。

既に日が暮れ始めたので、子供達は帰っていった。

仕方がないので酒場でも行ってみるか。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る