第3話 融合体 その2

翌朝は早くから起きて現場を探しに行くことにした。

街道から外れてオークが目撃されたという、森の中に獣道を通ってどんどん進んだ。

大分、時間が経過したため魂の残滓が消えてしまったのか、中々見つける事ができない。

どうしようか考えていると血の臭いを感じた。

急いでその方向に進むとオークの死骸を何体か見つけた。

一体ではなく群れだったことからハンター達は返り討ちにあったのかもしれない。

近くに大量の血痕を発見したがハンターの遺体が見当たらない。

おそらく既にディープシーターへ変化しオークを襲ったのだろう。

ただ三人同時に変化するとは考えづらい。

変化までの時間は個人差が多いのだ。

頭の中で考えを整理していると物音が聞こえた。


「グルルルゥッ」


オークの生き残りか。

仲間が襲われている間に逃げたのだろう。

私は鎌を出し戦闘体制を取った。

魔物は魔力が溜まった場所から自然発生し生物ではなく魔力の塊のようなものだ。

その為、この鎌で攻撃し消滅させることが出来るのだ。


「グオオオォーッ!」


オークが突進してきた。

人間より圧倒的に身体能力が高い死神にとってオークなど雑魚に過ぎない。

避けながら数回切りつけたらあっけなく消滅した。

オークにハンターの遺体が食べられたのだろうか?

こんなにキレイに食べるとは聞いたことがない。

周辺をウロウロ歩いてみると離れた位置に人間の足跡と残滓を見つけた。

ディープシーターに変化した後、ジャンプしてここに着地したのだろう。

普通の人間にはオリンピック選手でも不可能な距離だ。


「被害が拡がらないと良いんだけど……」


足跡を追っているが村とは違う方向なので大丈夫だとは思う。

ディープシーターには人間としての人格は残っていないため、行動の予測が難しい。

この方角に何があるというのだろう?


目の前に大きな岩壁が現れた。

良く見てみるとハンターの遺体が見えた。

一人だけだが何かに食べられた痕跡がある。

ここまで逃げてきたが壁に阻まれて、ディープシーターに襲われたのだろう。


「我らが主よ、この者の魂に正しい道を導きたまえ。そして、この者に永遠の安らぎを……セーラス」


仲間に襲われるとは、相当の恐怖であっただろう。

反撃するにも躊躇いが出てしまうものだ。

しかも、人間ではディープシーターは倒せない。

首をはねても魂を消滅させない限り、しばらくすると再生するのだ。

せいぜい逃げる為の時間稼ぎにしかならないであろう。


ジャリッ


やっと探していたものに出会えたようだ。

振り返ってその異様な姿に絶句した。

なんと腕が四本あるのだ。

魂の姿を見てみると二人分あるように見える。


「これが噂に聞いた融合体か……」


融合体。

ディープシーター同士が出会い勝者が敗者を食べて魂まで取り込むことで、通常の個体より強く異形なもののことらしい。

私は初めて見たが、なかなか出会うことはないらしい。

その為に私達、死神が鎮魂を行っているのだ。

死神でも負けることもあるらしいからトゥリオは、これに消滅させられたのかもしれない。


ダッ


「速いっ!?」


一瞬で間合いを詰めて攻撃してきた。

しかも四本の腕で連続で攻撃されるからたまったもんじゃない。

間合いを取ろうとするが、中々諦めてくれない。


キンッ ガシィッ ガッ


腕と鎌が高速で交差する。

このままではじり貧だ。

向こうは元気一杯だがこちらは休みがないと精神的に辛い。


ザシュッ


「痛っ!」


左腕に激痛が走った。

死神は怪我をおっても放置してれば再生して元通り治る。

だからといって攻撃一辺倒にはしない。

痛覚はあるため攻撃を受けると相当、痛いのだ。

通常は融合体には複数人で当たるらしい。

全くもって特別手当てをお願いしたいくらいだ。

融合体は爪に付いた私の血を舐めて喜んでいるようにみえる。


「キモい……」


こんなヤツをあまり相手にはしたくない。

そろそろ決着を付ける事にしよう。

私は念じて手から青白い炎を出現させた。

死神は基本的に魔法が使えない。

私は転生するときに自称神様におまけして貰ったのだ。

魔法がある異世界と聞いたら使ってみたくなるのは当然だろう。

目覚めた私は炎を出せることに気付いた。

残念なのは死神の特性を炎が継承しており物理的な燃焼現象は起こせないのだ。

魂や魔物を燃やすことくらいしか出来ない。

戦闘には重宝するが想像していたのとちょっと違った。

まずは動きを止めるために炎を鎖状に変化させる。


「ヘルズバインドッ!」


青い炎が鎖となって相手を拘束する。

通常の炎であれば拘束なんて出来ないであろう。

この鎖は炎で出来ているが肉体ではなく魂を拘束するのだ。

幽体が動けなければ肉体も動かせない。

動きも封じたしさっさと始末しよう。

青い炎を鎌に纏わせていく。


「エクスプロードサイズッ!」


ヒュヒュン……ドガアァン


この技は敵の魂をを一瞬でクロスに切り裂き、大爆発を起こす一撃必殺だ。

魔法を融合させると色々な技が生み出せるようだ。

他の死神は真似できないため、こういう厄介な仕事を回される事がある。

ただ爆発も魂だけで肉体は何も変化がないので、異形な存在を知られないよう埋めるのが面倒くさい。


さて、仕事も終わったし村に戻ろう。

ハンターギルドに戻って遺体を一体だけ発見したことを報告した。

後二人は永遠に発見される事はあるまい。


ふと部屋の隅っこにスキアが座っているのが見えた。

本当に神出鬼没な男だ。

特別な依頼が完了したのが何故か分かるらしい。


「無事に終わったわ。

融合体が出現したからトゥリオは死んでるんじゃないかな」

「それは残念だ。

それにしても融合体に一人で勝つとはな」

「依頼したときには融合体がいるのが分かってたんじゃないですか?

警告くらいは欲しかったわ」

「可能性があったが、お前なら問題ないと判断した。

事前に不確定な情報を流すのは思考の誘導となり危険な場合もあるから、事実だけを伝えた」

「……まあ、いいですけど」

「当面の活動資金だ」


ずっしりとした皮袋を受け取った。

一体、何処から出てくるお金なのだろう。

お金目的でクエストを受注していないので死神は儲からない。

バックにどんな財源があるのだろう。

この男にしても常に無表情で色々と謎が多い。


「早速だが次の依頼がある」

「はぁ……また拒否権なしですね、どんな内容ですか?」


まだまだ休みは取れそうに無い。

私はスキアの話に耳を傾けた。

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