第2話 融合体その1

一つ目の村を過ぎて街道を歩いている時だった。

道から少し外れた広場に馬車が止まっていた。

こんな夜中に不自然だった為、近寄って確認してみることにする。

近づいて分かったが、案の定、馭者の遺体を発見した。

荷台を見てみると荷物は空だが商人と思われる遺体があった。

翌朝には誰かに発見されるだろうが、念のため手早く鎮魂を行った。

おそらく盗賊の仕業であろう。

この世界では治安は決して良くなく、旅には護衛を雇うのが一般的だ。

だが、このように雇う余裕がない商人は良いカモになってしまう。


馬車から街道に戻りしばらく進むといきなり暗闇から10名くらいの男たちが現れた。

おそらく商人を襲った盗賊であろう。

こんな夜中に少女が一人で歩いてたら襲ってくださいと言っているようなものだろう。


「お嬢ちゃん、夜道に一人では危ないから、おじさんたちについておいで」


何てうさんくさい台詞だろう。

こんなんでついていくとでも思っているのだろうか?


「恐怖で声も出せなくなったかあ?」

「安心しな、たっぷり可愛がったあと、何処かのご主人様に売り飛ばしてやるからよ!」


「オブビリオンサイズ……」


ヒュッ、バタッ


まずは一人目。


「何をしやがったっ!?」

「その大きな鎌を何処から出しやがったんだ!」


ヒュヒュ、ヒュッ…タタ…ヒュン


あと一人。

ちなみに誰も殺していない。

死神が生者を殺すのは禁止されている。

襲われた際はこの技で記憶を消して何も無かったことする決まりだ。

私からすれば盗賊など皆殺しにすれば良いと思う。

……死を見すぎて考えが物騒になった気がする。

取り敢えず終わらせよう。


「さて、夜道は危ないみたいですから私について来ますか?」

「まっ、待ってくれ……。

俺が悪かったから見逃してくれ!」

「………………却下です」


ヒュンッ……バタッ


さて、どうするかな?

いつも通り縄で縛って放置しておくか。

私は殺せないがこれで誰かが罰してくれるだろう。

他の死神ならあのまま放置だろうが、悪人を放置する気にはなれない。

やはり日本出身だからだろうか。

少し遅くなったがさっさと進もうか。


タマル村に着いたのは昼前であった。

飲食や排泄が不要な体とは旅には最適だ。

人間だったらもっと時間が掛かっただろう。

取り敢えず宿屋の確保からしておこうか。

2軒あるようだがどちらにしよう?

うん、暖かみを感じるこっちにしよう。


カランッ


「いらっしゃい!」


20歳前半と思われる看板娘かな?

家族経営が多いから家の手伝いであろう。


「1週間ほど泊まりたいのですが」

「大丈夫よ、お嬢さんは一人旅?」

「一応、ハンターをやっています。

修行の旅をしながら見聞を広めてます」

「最近、物騒だから気を付けてね!

最近、盗賊も出るみたいだから」


昨日、捕まえた奴らかな?

それにしてもハンターは便利な職業だ。

出身や身分も関係なく自由に行動でき、身分の証明にもなる。

怪しまれずに調査も可能でまさに天職だ。


少し世間話をしたあと部屋に案内された。

予想通りフカフカな布団だ、この辺は譲れない条件だろう。

平時なら睡眠も不要だが、私は寝るのが好きなのでベッドには拘りたい。

精神の安定に必要なのだ。

さて、情報収集でも始めるとしよう。


カラランッ


まずは定番のハンターギルドからだろう。

この町にいた死神はトゥリオというらしい。

同じようにここで何かしらのクエストを受けたであろう。


「いらっしゃい、どのようなご用でしょうか?」

「すいません、トゥリオさんがどのクエストを受けてるか教えて貰えますか?

この町で会う約束をしていて追いかけたいと思うんですが」

「ちょっと待ってね……これかな。

行方不明者の捜索ね、1週間前に受注してるわ」

「その内容を詳しく教えて貰えますか」


少女の姿は疑われなくて楽だ。

大体、優しく教えて貰える。

クエストの内容は至って普通だった。

三人のハンターが討伐クエから戻ってこないことから家族から捜索依頼が出されたようだ。

討伐対象はオーク単体なので、予定外の魔物にでも遭遇したのだろうか。

追い掛けたトゥリオも負ける相手なのだろうか?

明日にでも戦闘跡でも探しに行こう。

痕跡などで相手が特定できれば良いのだが。

今日は食事でもして宿屋に戻ろう。

別に食べることも出来るのでカモフラージュで食べる死神もいる。

ずっと何も食べないのは明らかに怪しい。

目や髪の色も認識阻害の能力で通常の人間には違う色に見えるらしい。

死神自体も伝承に残ってるが過去の死神が記憶を消し忘れたのだろう。

戦闘中は認識阻害が消えるらしいのだ。

ちなみに、私にとって食事は一つの楽しみだ。

味は分かるので異世界の料理を時々食べる。

調味料も少なく質素なものが多いが素朴な味が良い。

毎日、食べると飽きそうなので時々が丁度、良いのだ。


ここの食堂は中々だった。

川魚と山菜を使っており、どこか和食を連想させた。

時々、昆虫食があるが勘弁願いたい。

なんだか分からず頼んで虫料理が出てくると思わず泣きたくなる。

こればっかりは慣れないらしい。

今日は無事にお腹も満たせたのでゆっくり休もう。

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