#8 依頼
前書き失礼します。
前回の話から時間が飛びます。
――――――――――――――――――――
「ふう…。やっと一段落したな」
「そうだね~。でもこれでまたゆっくりできるね」
俺たちの目の前に広がる、さまざまな家具と木目調の壁。
ここまで言えばもうわかると思うが、俺たちはやっと念願の家を手に入れたのだ。
もちろん、俺たち二人の所持金はすっからかんだ。
ストレージにあったレアアイテムもオークションなどにかけてほとんど売りさばいた。
「ゆっくりできるのはいいんだけどなぁ…。なんか
「もう染みついちゃってるもんね~。わたしもなんとなくもやもやしてるし」
久しぶりにやってみてもいいかもしれないな…。
やり始めた当初は野良でやってたりもしたけど、それだと効率が悪いしそもそもどこに出るかもわからないから運ゲーになるんだよな…。
こっちきてからもちょくちょくPKの話とかは聞いてたから時間を見つけては狩りにいったりはしたけど、ものの見事に全部外れたし。
「前みたいに依頼を受ける感じのがいいんじゃない?」
「そうだな。とりあえず掲示板かなにかに出してみるか」
ゲーム内チャットの画面を呼び出し、自分で新しいチャンネルを作成しスレッドを立てる。
するとすぐに、チャンネルに人が集まってきた。
ゲーム内チャット、通称掲示板は新しいチャンネルが作成されるとプレイヤーに通知する機能がある。
これを使うには自分で設定から通知を設定する機能をオンにする必要があるので、この機能をオンにしているプレイヤーは掲示板をよく使うプレイヤーかよほどの暇人がほとんどである。
「それにしたってこんだけ人がすぐ集まるとか暇すぎるだろ…」
「あはは、でもありがたいといえばありがたいよね。けっこう情報も集まりそうだし」
「世の中便利になったもんだよな…」
「ふふっ、ゆきくんおじさんみたいだよ?」
「…え、まじ?」
けっこうショックなんだけど。
彼女におっさん臭いと言われる悲しみ…。
「わー、すっごい落ち込んでる…。ごめんね?」
「…(ズーン)」
この流れで久しぶりにちょっと甘えようかな。そんなことを思い、それを実行に移しかけた瞬間、ピロン♪という音とともにメッセージが届いた。
これは…DM?
しかも俺だけじゃなく彼女にも。
ということはさっそく仕事の依頼か?
送られてきた文章を見ると、やはりそうだった。
「ゆきくん」
「ああ。うちに呼んで詳しい話を聞こうか」
ただ、ここを探し当てさせるのはさすがに悪いので近くの街で合流してそこから移動して話を聞くという形になった。
「わざわざごめんなさい。面倒をおかけしてしまって」
「いえ、お気になさらず。それにしても、居心地のいい家ですね」
「そうですか?ありがとうございます」
それからいくつか他愛のない話をして、ルアさんの話を聞くことになった。
依頼人の女性――ルアさんは、最近何度かPKの被害にあっているらしかった。
「最初は、私一人のときだけだったんです。その日はちょうど少しレアなアイテムを見つけて街に戻る途中だったんですが、街の近くの森に入ったときに誰かが作った落とし穴があって…」
「気づかずに落ちてしまったと」
「はい…。お恥ずかしい話ですが、レアなアイテムを拾ったことで浮かれていてまったく気づきませんでした。穴は2~3メートルくらいの浅いもので、私でもそこまで時間をかけずに出ることができたんですが…。穴から出て、少し気の緩んだ隙にやられました。幸い、アイテムをロストすることはなかったのですが、それから執拗に狙ってくるようになりまして…」
「なるほど…。それで、一番最近あったのはいつなんですか?」
「その…昨日、なんです」
「えっ。昨日も?」
思わずすっとんきょうな声を出してしまった。
これ聞いてる限りだとやりすぎじゃないかと思うんだけど…。
「はい。その前にも二日おきくらいで同じ人に襲われていて、何度かアイテムもロストしていたので、仲のいいフレンドさんたちとパーティーを組んでもらっていたんです。パーティーを組んでいたときには襲ってくることはなかったので、昨日も大丈夫だろうと思っていたんですが…」
「相手も人数を増やしていた、と?」
「私はすぐに死んでしまったのでフレンドさんから聞いた話になるんですが、相手は3人で全員カーソルが赤だったそうです」
赤いカーソル…。明らかに犯罪者カラーだ。しかも何度もプレイヤーを殺している。殺し慣れてると言ってもいいだろう。
通常、プレイヤーのカーソルは薄い青色だ。
NPCや攻撃意思のないモンスターは明るい黄色で、何度かプレイヤーやNPCを攻撃または殺しているプレイヤーは濃いオレンジになる。
そして今回話に出てきた赤いカーソルはモンスター全般と複数回(基準はわからない)プレイヤーを殺しているプレイヤーの色だ。
「わかりました。詳しい場所を聞いても大丈夫ですか?」
「えっと…山荒らしの森ってわかりますか…?」
山荒らしの森?みゆにも目配せで聞いてみるが彼女も知らない。
ルアさんいわく、アイデン鉱山から街に戻るときの近道らしく、知っているのはごく僅かなプレイヤーだけだという。彼女がPKにあっているのはその森の中心部辺りらしい。
「よし。明日、俺たちで行ってみます。それからまたお話をさせてもらっても大丈夫ですか?」
「わかりました。ありがとうございます」
「いえいえ。そうだ、フレンド登録お願いしても大丈夫ですか?」
「はい。大丈夫ですよ」
彼女といつでも連絡ができるようにして、今日はお開きとなった。
「なんだか、けっこう大仕事になりそうだな」
「そうだね…」
それからルアさんのいなくなった部屋で、二人は計画を練り続けていた。
時折、いちゃつきながら。
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