#6 素材集めへ

鍛冶師のおっさん…ラッセルは俺の持ってきた素材を見て、ふんと鼻を鳴らすとそのまま奥に引っ込んでいった。

ちゃんと素材をもっていってくれているあたり作ってはくれるらしい。

…と思ったら、すぐにまた戻ってきた。


「装備はちゃんと作っておいてやる。三日後にとりにこい」


「三日?そんなにかかるのか?」


「ああ。そのぶん性能は保証してやる。要求レベルも高くなるからレベルはちゃんと上げておけよ」


「…ちなみに、どれくらい?」


「作ってみないとわからんが、20は下回らないだろうな」


「2、20!?」


今日あれだけみゆとモンスターを倒して、しかもさっきも中ボス級のを何体か倒しているのに俺のレベルはまだ7だ。

これからもっと上がりづらくなることを考えると、なかなか厳しいのではないだろうか。


「えっと、いかなかったら…?」


「引き渡しはする。が、使えないな」


「ぐっ…。頑張って上げるしかないか…」


「まあ、そういうこったな。その装備はくれてやるから、せいぜい頑張れや」


「え、いいのか?」


「…在庫処分だ。使ってくれたほうがありがたい」


「じゃあ、ありがたく使わせてもらうよ」


俺が今つけているのはボロボロの初期装備…ではなく、さっき素材を集めにいくときに見かねたラッセルが貸してくれたものだ。

あとで返せと言っていたのだが、心変わりでもしたんだろうか。

絶対に在庫処分ではないし。


これは要求レベルこそ5だが、きちんと強化とかをしていけばしばらくは使い続けられる業物だ。

普通に売りに出したらかなりの価格で売れるだろうに…。

何てことを思っていたら、ピロン♪という音とともにメッセージが届いた。

差出人は…やべ、みゆだ。

文面こそ優しいが、相当怒ってらっしゃる。


「じゃあ、俺はそろそろお暇するわ。装備ありがとうな」


「おう。坊主、強く生きな」


どうやら俺が焦っているのを悟ったのだろう、そんな言葉をかけてきた。


「おう。頑張るわ…」


このあと、ものすごく怒られて一時間くらい口もきいてもらえなかった。

一時間くらいでみゆが我慢できなくなったのか飛びついてきたけど。


―――――――――――――――


「それで、わたしが寝てる間にやってたのね」


「そういうこと。素材もあったし、みゆのぶんも追加でさっき頼んどいたよ」


「それに関してはありがと。でも、今度からはもうだめだよ。わたしが寝てるときに一人でやるのずるい」


「わかったよ。それで、さっきの話なんだけど、みゆの杖だけは別の人に頼まなきゃいけないらしくてさ、素材もなかったから一緒に取りにいこうかと思うんだけど…」


「わたしはもちろんいいよ」


「じゃあ、さっそく行こうか」


「はーい」


今回みゆの杖の素材となるアイテムを落とすのは、トレンブルトレントというモンスターで、近づくと震えだすので比較的見つけやすいらしい。

生息地は近くの森のとば口だが、中ボス並みの強さを誇る。

…こんなぽんぽん中ボス出しちゃっていいのかな…。

まあでも、これでみゆが強くなれるならありがたいけどさ。


「この辺か…?」


「でも、近づくと震えるんだよね?」


「そのはずなんだけど…」


――ガタガタガタッ!!


「っ!来るよっ!」


「みゆ、森から少し離れるぞ!」


「了解!」


トレントのタゲはとれてるはずだから、森にいる他のモンスターのタゲまでとらないように森から離れた。

幸い、他のmobがトレントともにわらわらと出てくることはなく、トレント単体で出てきたのだが、驚くべきはその大きさだ。森の一部がそのまま歩いているようにも見える。


「ちょっとでかすぎないか…?」


「さすがにこの大きさは予想外だよ…」


レベルは…8。俺より1高い。

ソロならきついだろうけど、今日はみゆがいる。


「みゆ、援護頼んだ」


「任せて。いつでもいいよ!」


「いくぞっ!」


戦いの火蓋が切って落とされた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る