#3 武器クエスト

「いやー、合流すんのにこんなに時間かかるとは思わなかったぜ」


「よくよく考えたら名前しかわかんないのに集合しようっていうのが無茶だよね」


「ほんとにね~」


「ま、まあ無事合流できたんだから結果オーライだろ」


なんとか無事に全員合流できて、今は武器クエストの開始地点に向かっている。

武器クエストとは自分の使いたい武器を選んで軽い説明や練習をするクエストで、全プレイヤーが一度は必ず受けるというしくみになっている。

一度にたくさんのプレイヤーがそのクエストを受けて、サーバーが処理落ちしないのか心配だったが、特に問題はないらしい。

サーバー強すぎんかねこのゲーム。


「みんなは武器何にするつもりなんだ?」


「俺は両手剣だな」


「あたしは普通の剣かな~」


「わたし、どうしよっかな…」


「あれ、みゆは決めてないのか?」


「うん。ゆきくんのサポートしたいからそれに最適なのって飛び道具なんだけど…」


「弓とかはないみたいだな…」


俺に合わせてくれるのは嬉しいけど、好きなもの選んでくれていいという旨をそれとなく伝えたところ――。


「わたしはゆきくんのサポートするのが一番好きだから大丈夫だよ」


「ひゅ~、お熱いね~!」


「まお、こいつどうにかしてもらっていいか?」


「はーい。じゃあこっからは別行動でもいい?」


ん?なんでまた急に…。


「俺は構わないけど…」


「わたしもいいけど、どうして?」


「いや、せっかくだから二人にしてあげたいなって。ほら、いくよイチ。」


「お、おい。わかったから引っ張るなって!」


あっという間に二人は人混みの中に消えていった。

気を使わせちゃったみたいだな…。


「ふふっ、わかりやすいなぁ」


「ん、なにがだ?」


俺とは対照的に、みうは薄く微笑みながら彼らを見送っていた。


「だって、まおちゃんの耳赤くなってたでしょ?」


「そうなのか?俺にはよくわかんなかったけど…」


「まおちゃんは、早く二人きりになりたかったんだよ」


「なるほどなぁ…」


まおがイチのことを好きなのは知っている。

だからこそ、応援したいのだが…。


「あいつ、鈍感だからなぁ…」


「鈍感さはゆきくんも一緒だったんだよ?」


「うっ…。それに関しては本当に申し訳ない」


「まさか襲いにいっても気づかないとは思わなかったよ~。わたしって魅力ないのかなってすっごく思ったし」


「みゆに魅力なかったら誰にも魅力なくなっちゃうだろ…」


「えへへ、ありがと」


そんな話をしながら歩いていくと、武器クエストの開始地点に到着した。

通常、クエストはNPCから受けるものだが、今回のクエストは全プレイヤーが必ず受けるものなので、初めてその地点に到着したときにクエストが開始されるらしい。


「みゆは結局どれにするのか決めたのか?」


「んー、まだ悩み中…」


「待ってるから、ゆっくり決めていいぞ」


「うんっ。ありがとうね♪」



武器クエスト開始地点に到達しました。

ここからは別マップに移動しますが、よろしいですか?

Yes/No


当然、Yesを押した。

すると、白い光とともに初期設定を行った場所のようななにもない空間に一人で立っていた。

どうやらみゆとは離れてしまったようだ。


「武器の設定を行います。あとから変更することも可能です」


自動音声に続いてウインドウが出てきて、武器を選択する画面になっていた。

俺は他のゲームでも使っていた短剣を選択した。

いつもは二本使っていたから二本がよかったけど、さすがに最初から二本は持てないみたいだ。

ただ、双剣スキルはあるようで一安心した。


このゲームのほとんどのスキルにはシステムアシストと呼ばれるシステムが動きを補助してくれるものがあるらしく、その機能を切ることもできるらしい。

とりあえず短剣を試し振りしてみたら、だいぶ違和感があったので短剣スキルだけシステムアシストを切っておいた。

他のスキルも違和感があれば順次切っていくつもりだ。


終了ボタンを押して、もとの場所に戻るとリザルト画面が出てきて経験値と武器、回復アイテムが3つ送られてきた。

みゆにメッセージを送って、人が比較的少ない公園のようなところのベンチに腰かけて彼女を待つことにした。

それから数分後に、彼女から終わった旨のメッセージが届いたので合流して、ついに外にモンスターを狩りにいくことになった。


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