第179話 モフモフ戦隊
オルウェンと領主の兵達が衝突すると思われた瞬間、広間から二階へと繋がる踊り場に照明が当たったかのように明るくなる。
そこには後ろから照らされる光に五人のシルエットが浮かび上がった。
仮面を被った少女達なのは分かる。
「そこまでにゃ!
全てのモフモフを愛する正義の味方、モフモフ仮面参上!
そして、今日ここに新しくモフモフ戦隊を結成するのにゃ。
そして、私こそモフモフ仮面改めモフモフレッド!!」
ノリノリのタルトである。
「モフモフピンクです!」
「モフモフイエローなのです!」
「モフモフブルー…」
リーシャ、ミミ、リリーも続く。
「も、モフモフホワイトです…」
一人ノリきれてないマリア。
「五人併せてモフモフ戦隊、ここに爆誕にゃ!!」
ドーンと後方で五色の爆発が起こる。
オルウェンも領主も兵士達もあまりにも場の雰囲気と違うノリに付いていけずポカンとしている。
「もぅ、やだ…恥ずかしよぉ…。
お嫁にいけなぃ…」
遂に恥ずかしさに堪えきれなくなったマリアが横を向いてうずくまる。
「げんきだしてください。
わがままにつきあってくれてもうしわけないのです…」
「いいの、わかってるの。
いつも強引なのは理解してるつもりなの…。
でも、これは…」
落ち込むマリアを励ますミミ。
タルトが子供達の希望を叶えるのに考えた事で戦隊といえば五人が良いと言い出し、嫌がるマリアを無理矢理引き込んだのだ。
遂に領主が思い出したように叫び出す。
「何なんだ、アイツ等はっ!?
モフモフ仮面があんなにいるのは何故だ!?
とにかく、ここにいる奴を全て殺せ!」
この声を切っ掛けに兵士達は武器に構え直し殺気が漲る。
「ピンクとイエローはホワイトを!
ブルーはオルウェン君を守って!
ここはモフモフレッドが悪い人達に天罰を与えるにゃ!」
そのまま飛び上がりオルウェンの前にフワッと降り立つ。
「こんな数の兵士相手にお前一人じゃ無理だ!
そもそも、何でこんなところに呼び出したんだ?」
そう、ここはオルウェンの隠れ家ではなく無数にある廃屋の一つである。
ここにオルウェンを呼び出し、領主にここがアジトだと教え舞台を整えたのだ。
リーシャやリリーが出入りしたり、オルウェンに化けたミミがここを本物の隠れ家であるように思わせたのである。
「本物のモフモフ仮面と言ったにゃ。
その実力を見てるといいにゃ!」
そして、勢いよく兵士の中へと飛び込んでいくと華麗に攻撃を受け流しながら一人、また一人と気絶させていく。
魔法で一気に方をつけてもいいのだが、タルトだとバレる可能性は減らしたいと思っていた。
気付けば残るは領主だけとなっている。
「強え…」
「これが本物の実力にゃ。
さあ、残るはあなただけ、覚悟するにゃー」
「くそっ!
俺はここの領主だぞ!
俺に手を出してみろ!
お前らのような盗賊なんて王都に応援を依頼して徹底的に潰してやる!」
この言葉にオルウェンは焦りが見える。
今までのような地方の兵ではなく王都の精鋭では相手が悪い。
「何だと、貴様がその気なら応援が呼べないようにここで殺してやる!」
持っていた武器を再び構えるがタルトに制止される。
「その必要はないにゃー。
この人はもう終わりにゃー」
「どういう意味だ!?
盗賊ごときに何が出来る?」
「これが何だか分かるかにゃ?」
タルトはどこからともなく数冊の本らしきものを取り出す。
「それが何だと言うん…待て…それは!?
どうしてお前がそれを持っている!?」
「驚いているようだにゃ。
これはあなたの税を横領している証拠、いわゆる裏帳簿だにゃ。
兵士がみんなここに集まったので盗むのは簡単だったにゃー」
「その為に場所をわざと教えたのか…。
ええい、お前がどこに持っていこうと盗賊の言うことなど誰も信じまい!」
「それどうかにゃー。
ホワイト、お願いにゃー」
呼ばれて前に出るホワイト。
そして、仮面を外し素顔を見せる。
「私の顔をお忘れですか?
玉座の間で先日にお会いしましたよ」
「玉座だと?
何を言って…いや…まさか…。
そんな馬鹿な…貴女は…」
「こいつが何だっていうんだ?
領主のお前が何に驚く?」
驚き顔色が真っ青の領主に対し、何が起きてるか分からないオルウェン。
「貴様のようなゴミがお会いできるような存在ではない!!
こちらは…このお方はこの国の女王!
マリア様であるぞ!」
領主は膝をつき頭を下げる。
オルウェンは信じられないような表情で立ち尽くす。
「貴方の罪は全て知っています。
そして、既に外の兵士達も王都からの兵によって真実を伝えています。
寧ろ貴方を捕まえる為に待機していることでしょう。
また、屋敷も徹底的に調査して全ての罪を償わせます。
お友達の商人も同じように裁きを受けて貰いますから安心しなさい」
マリアは整然と領主に対して言い放つ。
そこにはタルトの前で見せる少女の顔ではなく、女王としての厳しい一面であった。
「く…。
だが、俺が女王と盗賊のモフモフ仮面との繋がりを話せば都合悪いはずだ!
そうだ、ここで見逃してくれれば誰にも話さないと約束しよう!」
「私を脅そうと言うのですか?」
「そんな…女王様を脅そうだなんて。
ただの交渉ですよ、お互いのための」
マリアは無表情のまま領主を見据える。
「それでは証拠を残さないようにここで殺しましょうか」
「何をっ!
裁判なく勝手に処刑なんて!」
「あら。
これは貴方が言った言葉ですよ。
自分の領地内であれば罪人を裁けると。
女王である私は国内の何処でも問題ないでしょう?」
「何故それを…?
あの場には誰もいなかったはずだ…。
貴女は悪魔か…?」
「悪魔?
それは違います。
私には女神様の御加護があるのです」
マリアはそこでタルトの方をみてクスッと笑う。
それも一瞬で再び冷たい女王へと戻った。
「それに貴方が何を言おうと女王である私の言葉とどちらを信じるでしょうね。
さあ、この者を連れていきなさい。
余罪を徹底的に調べるのです」
外から来た近衛兵が領主含め倒れていた兵士も連行していき、この場にはオルウェン含めたタルト達だけが残った。
オルウェンは直ぐに土下座をし懇願する。
「女王様!!
俺はどうなってもいいですから他の者を助けてくれ!
窃盗は全て俺がやったことだ!」
「さあて、困りましたね。
タルトちゃん、どうしようか?」
「うわっ、マリアちゃん、名前言っちゃ駄目なのに。
まあ、ここには私達だけだしもういいかな」
こうしてタルトは仮面を外す。
「そこのハーフの子を連れ女王様と対等にはなしてるお前は…いや、貴女は一体何者なんです」
「それは乙女の秘密です!
さあてあなたの家に行ってから続きを話しましょう」
渋々、オルウェンはタルト達を連れて家である廃屋へと戻っていった。
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