第80話 調査を終えて

ウンディーネが去ったあと、壇上で今、起きたことについて話し合う事にした。

ティアナは今まで疑問だったことを切り出し始めた。


「あの扉を開けたことで精霊の封印が解けたとみて間違いないだろう。

それよりも次に起きたことだ!

何故、タルトだけ精霊の言葉を聞き取れて理解できたのだ!?」

「いやーー、どうしてでしょう…?

急に頭の中に声が響いたんですよー。

女神様と関係があるのかもしれないですねー」


誤魔化そうと必死に言い訳をするが、棒読みのため、いまいち説得力がなかった。


「聖女様が古の女神様と関連するのは間違いございません。

着けておりますネックレスは紋章を型どっておられるのが証拠です」

「ネックレスだと…?

むむ…確かに古文書で見たことがあるな。

これは何処で入手したんだ?」

「これ外れないんです…いつの間にか身に付けてて、最初は呪われてるんじゃないかと心配したんですよー」

「すべてが謎の存在だな、君は…。

まあ良い、次は精霊が封印された事だが数千年は戦争が続いているのは、古文書から判明している事実だ。

それより前だと一万年以上昔の事なのだろう。

当時は種族も少なく平和だと言っていたな」

「それでアタシやティアナ、リーシャのような種族は何処から来たって言うンダ?」

「これは推測だがその後に現れた光と闇の神に付いて来たのかもしれんな。

その二柱の神も何処から来たのかは定かではないしな」

「成る程、ティアナ殿は急に現れた勢力同士で争いが始まったと思われるんですな?」

「オスワルドの言う通りだ。

二つの勢力が急に現れたんだ、領地争いを始めても不思議ではない。

人間同士でも領地を巡って戦争してるのだろう?」

「お恥ずかしながらおっしゃる通りです。

今は落ち着いていますが、虎視眈々と国同士で狙いあってるのは間違いございません」

「更に謎の勢力である精霊を封印した者だ。

死の王と名乗るくらいだ、我らにとっては敵である可能性は高い。

だが、その正体も精霊を封印した理由も今、何処にいるかも謎に包まれている」

「うぅ…難しい話は頭が痛くなりそぅ…」

「おいおい、タルトは聖女様なのだろう?

知恵の女神だと聞いたぞ」

「知らないですよぉー、勝手にどんどん肩書きが増えてるんですもん…」

「いえいえ、聖女様の見識はとても深く、我が領地が発展したのは全て聖女様のお陰です。

今まで多様な知識をご教授頂きました」

「アルマールの事は噂で聞いている。

ここを出たら寄ろうと思っていたところだ。

そこでどうだろう、ワタシをしばらく滞在させて貰えないだろうか?

その新しい技術を拝見したいし、何よりタルトを研究することが理に近づける気がするのだ」


ティアナはやる気に満ちた目でタルトに迫ってくる。

そのうち自分の秘密が見破られそうでちょっと不安なタルトであった。

溜め息をつきながら、口を開く。


「…分かりました、誰でも受けていれるのがアルマールのモットーですから!

神殿も空き部屋が沢山あるので、何時まででもどうぞ。

でも、町の発展に協力お願いしますね」

「承知した!

ワタシの知識で役に立つことがあれば、何でも協力しよう。

ところで、手に入れた精霊の力はどうなのだ?」

「そうですね…こんなのどうです?

それーーーー!!」


ステッキの先や頭の上などから水を出して見せる。

ただの水芸であった。

喜ぶ子供達と呆れる大人達。


「何が出来るかはおいおい試してみますね。

今日はそろそろ引き上げましょう!」


こうしてティアナを加えた一行は帰路に着いた。

帰りがけにキメラがいる扉を開けられないように封じておいた。

おまけに「この先、猛犬注意!」の注意書を残して。


アルマールに戻ると幹部メンバーを集めて、ティアナの紹介と遺跡での出来事を説明した。

各々、様々な反応を示したが、桜華のように全く興味を持たないものもいた。


「そんな大昔のことは関係ねえなあ。

今が楽しいのが一番大事だ」


だそうである。


オスワルドは領地に戻ると速やかに一つの隊を編成した。

これはリーシャの両親の亡骸を運ぶためである。

そのお陰で町の近くの墓地に現在は移され、立派な墓石も用意された。

リーシャも時々、訪れては色んな出来事を両親に報告するのが習慣となったのである。


アルマールに戻ったらもう一つの進捗があった。

王より七国会議への出発に関して連絡が届いていた。

戻って早々に再度、出発の準備が大忙しとなったのである。

先日の国からの依頼によりタルトに同行するのは、オスワルド、ノルン、ティアナ、リーシャ、ミミ、リリーで決まった。

一行はまず、王都へ向かう為、急ぎ馬車で出発したのである。

道中は問題なく王都へ到着した。

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