第24話 オスワルド再来

ノルンはシトリーとカルンの方を向き頭を下げた。


「私は誤解していたようだ。

貴殿が自分の身を犠牲にして人間を庇った。

悪魔にも色々といるんだな…。

すまなかった」

「先程はカルンを守って頂いてお礼を申し上げマスワ」

「…助けてクレテ、ありがとナ…」


カルンは照れ臭そうにして言った。


「それにしてもさっきの悪魔達は見た目からガラが悪そうだったよねー。

シトリーさん達とは大違いだよね」


タルトは疑問に思ってたことを聞いてみた。


「アイツラは人間からの変体ダカラナ。

悪事を働いた人間が変異する事があるらしいゾ」

「ワタクシ達は生まれた時から悪魔デスワ。

貴族と庶民のような違いがアリマス。

勿論、能力の違いは歴然デスワ」

「天使も同様に人間が変異した個体がいる。

私も生まれながらの天使だがな」


二人の説明にノルンも補足した。


「最初に出会ったのが3人で良かったよ!

あんな人達だったら、もう諦めてたよ…」

「ワタクシ達もタルト様に出会えて光栄デスワ」


戦闘後の雑談を終えて村の後処理について、何から始めるか悩んでいると遠くで土煙が上がっていた。

近づいてくると騎馬隊と歩兵の影が見えた。

タルト達の前で停止し、先頭の日焼けし筋骨隆々の爽やかな青年騎士が馬から降り跪いた。


「聖女様、ご無沙汰しております。

この村が襲撃されていると聞き、兵を連れて駆けつけました」

「………???。

どこかでお会いしましたっけ?」


この青年騎士には何となく見覚えがあるような気がしたが思い出せなかった。

そもそも騎士など村にいないし、ほとんど見たことがなかった。


「私ごときが覚えて頂こうなど大変失礼しましたっ!」

「アナタなんて覚える価値もないデスワ」

「シトリーさん、言い過ぎだよっ!

こちらこそ忘れてすいませんっ!!

どこかでお会いしときながら……」


二人で交互に謝り息ピッタリであった。


「改めて自己紹介します。

私はここの領主オスワルド・カートレットです。

先日は大変失礼を致しました」


オスワルドは深々と頭を下げた。


「…………えええぇーーっ!!

オスワルドさんてこの前の痩せていてガリガリだった人だよねっ!!

数週間しか立ってないのに、一体何が……」

「あの時、聖女様にお導き頂き生まれ変わりました。

勉学と鍛練に勤しみ、領民のために尽くせるよう努力しております!」

(いやいやっ、本当に転生したくらいの変化だよっ!!

陰湿な最低だった人がこんな好青年になるなんて……なんか笑うと歯が無駄に輝いてるし…)


タルトは声に出してツッコミそうなのを必死に抑えた。

とりあえず話を変えることにした。


「……それで悪魔は撃退しましたが、この後の対応について考えていたところだったんです」

「流石、聖女様っ!

事後処理についてはお任せください。

怪我人の治療と復興を手配致します」

「それはありがとうございます!

重症な方がいれば教えてくださいね。

治癒魔法を掛けますので」

「お心遣い感謝します!」


オスワルドはキビキビと部下に指示を出し始めた。

時には自ら大きな木材をどかして人々を救出していた。


「人間ってあんなに変われるもんなんだね……。

あっ、この世界では天使や悪魔にもなれるのか!?」

「アレはこの前、タルト姉が殴りすぎて頭が変になったんじゃナイカ?」

「あれで変わってなければ殺してイマスワ」

「悪い御仁には見えないが酷い言われようだな……」


その光景を見ながら各々の感想を言い合った。

作業に目処がついたのかオスワルドが近寄ってきた。


「後は部下に任せて大丈夫でしょう」

「率先してお疲れ様です!

すっかり領主らしくなりましたね!!」

「ははははっ、まだまだでございます。

タルト様の熱いご指導の賜物です!

ぜひ、あの愛の鞭をまた頂戴したいものです!」

「えっ!?」


オスワルドは開けてはいけない扉を開いたようだった。


「ところで、聖女様にお願いがあります」

「えっ、いやっ、あの時はちょっと怒ってて強く殴っちゃいましたが……暴力はいけないと思うのですっ!」

「良いんじゃナイカ?

ご褒美にステッキで思い切り叩いてヤレバ」

「何言ってるの、カルンちゃんっ!?

そんなご褒美、嫌だからねっ!」

「それは残念ですが、お願いは別の事です。

我が邸宅にお寄り頂けますでしょうか?

今後の事をご相談したいのです」

「そういうことでしたら……。

ちょうど防衛について考えてましたので。

村に寄って無事を伝えてから伺いますね」

「では、先に戻って準備してお待ちしております!」


オスワルドは馬に跨がり颯爽と去っていった。

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