第21話 拡張計画4

タルトは最初に畑の様子を見に行くことにした。

そこでは人間も獣人も関係なく力を合わせて畑を耕していた。

言葉ではなく目で見て、感じることで相手の事が理解しあえたのだろう。

保護した者も生き生きと働いている。

開拓した土地を与えるなどやりがいを与えた方が良いのかもしれないとタルトは考える。

一緒に学びながら町を作っていこうと決心した。


「皆さーん、お疲れ様です!

休憩しながら頑張ってくださいねー!」

「「「「「おおおおおぉぉー!!!」」」」」


空からの聖女による応援で歓声があがり、さらにやる気が出たようだ。

森の近くでリリスが試行錯誤しながらなにかをしていた。


「リリスちゃん、監督お疲れ様!」

「オォ、タルト!

良いところに来タ、これを見てクレ!」


リリスの指差す先を見ると、通常は材料を混ぜて何ヵ月も発行させる肥料が出来上がっていた。


「わぁ、どうしたのこれ?

もう出来上がってるの?」

「チカラが上昇したせいか毒の精製以外にも薬の精製や微生物の成長を促進出来るミタイダナ」


ただ横を見てみると失敗作の山も見えた。

初期の頃は完全に腐敗しオドロオドロしい造形をしていた。


「最初はチカラ加減が分からなかったンダ!

あまり見ルナ!!」

「すぐに覚えちゃうなんて天才だね!

早速、土に混ぜてみよう!」


恥ずかしがっていたリリスだったが、誉められて少し頬を赤く染めていた。


「後は任せるね!他の様子を見てくるよ!」


タルトは畑を後にし陶器の工房を見に行った。

そこには満面の笑みのシトリーが待っていた。

その足元には人が倒れているように見える。


「お待ちしておりマシタワ。

ご依頼のものは出来てオリマス」

「流石、シトリーさんだね!

ところで……そこに倒れてる人は……」

「あぁ、これはここの主人デスワ。

作り終えて休んでるだけデス」

「えっ!?

ここのご主人ってもっとまるまる太ってたよね!

なんか痩せこけてるし、白目剥きながら気絶してるのになんか表情が喜んでるように見えるんだけど……」

「それは忠犬は主のために働くことで喜びを感じるからデスワ。

あまりの嬉しさに気絶しただけデスノ」

「いや……そういうもの……なの……?」

「それでこの作ったものは如何シマスカ?」

「そう…だね…。

カルンちゃんがここに溝を作ってるから運ぶの手伝って貰えるかな?」


タルトは理解してはいけない世界があることを知り無視することにした。


「お安いご用デスワ。

では、行きましょうカ!」


カルンの所に着いたときには、既に溝が出来上がっていた。


「流石、カルンちゃん、もう出来たの?」

「技の精密さと威力が遥かに上がってるゼ!

凄い威力の真空波が出せたんダゼ!」

「リリスちゃんも同じこと言ってたね。

二人とも凄い成長だよ!!」

「タルトさま、わたしもてつだったの!」

「ソウダゼ、リーシャは風属性だから小さいが真空が作れたんダ!」

「そうなんだ、偉いねえ!!」

「えへへへ…」


頭を撫でてもらい嬉しそうな顔をしている。


その後、溝の近くに陶製の土管を運んだ。

畑にいる作業員から半分を溝に合わせて配置させた。


「では、これを溝に合わせて合わせて並べて行きます!

隙間なく、くっ付けて下さいねー」


溝に土管を並べて水道管を作ったのだ。

土管は合わせるとピッタリとくっついた。

それでも結合部に少し隙間が出来るので、タルトとシトリーが砂を熱してガラスにしてコーティングした。

人数も多くあっという間に畑の近くまで完成した。


「アレ、タルト姉。

土管が少し足りないゾ、あと少しで各畑に分岐する地点ナノニ」


カルンの言うとおり畑の少し手前の広場で土管がなくなった。

溝はそのまま畑まで伸び、そこから分岐しているのだ。


「これで良いの!

少し広場から離れてくださーい!」


村人が言われた通り広場から移動するのを確認してタルトは空に上がった。


「狙いは……広場……魔法少女風・気功砲!!」


四角の魔力砲が広場に直撃し、10m以上深い穴が空いた。


(一回、これがやってみたかったんだよねっ!!)


タルトは上機嫌であった。


「これは……貯水池デスワネ」

「さすがシトリーさん!

湖から水道管を通ってこの池に水を貯めます。

あとは用水路を通って畑に水が行き渡るんだよ!

ちゃんと水門もあるから調整可能だしね」

「早く水を流して見ようゼ!」

「そうだね、じゃあ湖側の水門を開けて貰えるよう合図をしようか」


タルトは空高くに魔力で出来た花火を打ち上げた。

すると水門に待機していた村人が水を塞き止めていた木の板を外した。

勢いよく土管を流れていった水はあっという間に畑に達した。


「皆さんお疲れ様でしたー!!

これで村が食料に困ることは無くなると思います。

これから村に戻って竣工祝いをしましょう!!」

「「「「「おおおおおおおぉぉー!!!」」」」」


その日は遅くまで水路の完成を祝って宴会が続いた。

この後も村人の手により畑は拡張していった。

こうして本人の知らぬ間に豊穣の女神と言う肩書きが追加された。

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