ちょっぴり残念な魔法少女の異世界見聞録

ねくさす

第1話 プロローグ 魔法少女誕生!?

「う…うぅん………」


少女はうっすらと目を開けてみると知らない天井が目に入った。

ぼ~~っとする頭を持ち上げて周りを確認してみる。

薄暗い洞窟かと思ったが、良く見てみると人の手によって整備された部屋のように見える。但し、石で出来た柱が崩れていたり埃臭い事から長い年月放置されたと思われる。


「どこ……ここ?

確か光りに包まれて……。

思い出せ、私の灰色の脳細胞っ!!」


………

……


遡ること数時間前。

朝の目覚めはいつものベッドの上であった。

少女の名前は日下部ここな14歳、中学3年生。

普通の家庭で育ち、普通の中学校に通っている。

母親がヨーロッパ系でハーフのため、綺麗な金髪であり小さい頃は近所では天使のような女の子だともてはやされた。

大きくなって可愛さはそのままだが、学校のテストはいつも赤点付近、運動も普通、ハーフだが日本語以外話せない、アニメやゲームなどのサブカルチャーが好きな残念美少女であった。


「行ってきまーす!」


休日であったが赤点の追試を受けるため制服に着替えて学校に向かった。


(いつもの事だけど追試なんて嫌だなー、

こんな時に異世界から侵攻があって封印された能力が………)


ここなは中二病全開で考え方も残念である。


「おはよー」


ここなが振り向くとメガネをかけたポニーテールの少女が手を振って駆けてきた。

メガネ少女の名前は綾乃、ここなの幼なじみである。


「おはよう、綾乃ちゃん」

「これから追試?」


小さい頃からの付き合いでここなの事は理解している。


「綾乃ちゃんが代わりに受けてくれないかな……?」


どこまでも残念な子である。


「自分で頑張らないと身に付かないよ」

「それは分かってるけど、大人になって授業の内容は役に立つのかなー」


他愛ない会話をしながら学校の方に向かって歩く二人。


「ところで綾乃ちゃんはどこかに行く途中?」

「えぇぇっと、散歩中かな」

「休日をのんびり過ごせるなんてうらやましいな……。

追試さえなければゆっくりと家でアニメをみながら……ん?」


遠くから何か光るものが近づいて来てるように見える。

だんだん近づくにつれて真っ直ぐとここなに向かっているような……。


『見つけましたーーーーーーーっ!!』


光る何かがここなの顔に直撃し派手に吹っ飛ぶここな。


「痛った……何なの一体!?」

「大丈夫、ここなちゃん!これは!?」


起きあがろうするここなと心配して近寄る綾乃、丁度その時。


どぉおおおーーん!


「今度は何!?」


ここなが音の方をみると大きい不気味な人形が立っていた。

明らかに人を殺せるような大きい包丁みたいなものを持って。


「何……あれ…映画の撮影か何か?」

「ここなちゃん、ここから逃げて!

……変身!」


その瞬間、綾乃は光に包まれ私服がフリフリな服に変化した。

それはアニメで良く見るプリキュ○やまど○まぎかのような魔法少女である。

気が動転して動けないここなをおいて謎の人形と戦いを開始する綾乃。


「何これ…?夢でも見てるのかな…?

いや、つねると痛いし。

こんな時、どうすれば?アニメなら急に力に目覚めて……」


少し落ち着きを取り戻し現在の状況を急いで頭の中で整理しながら綾乃の手助けする方法を考えていた。

ここなはいろいろ残念な少女だが友達をおいて逃げるような子ではなかった。


『私にお任せください!』


目の前にはさっきの光がふわふわとういていた。


「どちら様でしょうか……?」


怪しい光をジト目で見ながら質問した。


『私の名前はウル、魔法少女の妖精です。

素質のある少女を魔法少女として導き、悪と戦う使命を持っております。

新しく素質を持っている娘を探してこの町に来たところすごい潜在能力を持った少女の気配を感じたんです。

その気配を追っていたところアイツに見つかって……』

「それって私の事!?

魔法少女キターーーーッ!!

それって魔法少女になって悪と戦えば良いんだね?」


話の途中で被せぎみに質問するここな。


『あっはい!?理解が早くて助かります。

追われながら遂に少女を見つけて飛んできた次第です』

「直ぐに魔法少女になれば綾乃を助けられる?」

『もちろんです!

では、魔法少女の説明から……』

「説明なんて後で良いから早くお願い!」

『本当は説明義務があるのですが、緊急事態ですから分かりました。

では、失礼して』


光はしゃべり終わるとそのまま、スー~~っっとここなの胸の中に消えた。


(何これっ、胸の奥が熱い……)

『変身と言ってください』

「………変身」


その瞬間、ここなは光に包まれ綾乃と同様に変身を開始した。

光が落ち着くと白を基調としたうっすら桃色が入った服の魔法少女が立っていた。


「何これっ、布の面積少ないんだけど!

お腹も見えてるしスカートも短いんだけどっ!?」


ここなは自分の姿を見ながらツッコンだ。


『ここな様はとても可愛らしいお方でしたので、天使や女神をイメージしています。

とてもお似合いですよ』

「アニメのイメージと全然違うんだけど……」

『子供向けの番組では露出の多い服はクレームになりますから』

『うぅ……納得したくないけど今はそれどころではないか』


気持ちを切り替えて綾乃の方を見るここな。


「よし行こう!!」

『はい、マイマスター!』


思いきり踏み込んで飛び出すと真綿のように体が軽く、一気に戦闘中の綾乃に近づく。


「ちょっ、ちょっと速すぎっ!!

止まれない!ぶつかるっ!!」

「ここなちゃん、その格好はまさか!?」


綾乃までもう一息のところでここなは大きな光に包まれた。

眩しくて何も見えず、意識が遠のいていく。

頭のなかにキレイな声が聞こえた。


(助けて……ください……)


………

……


座りながら意識を失う前の出来事を思い出したここな。


『お目覚めですか、マスター?』

「うわっびっくりした!?

頭の中で声がするけど、もしかしてウル?」

『そうです、マイマスター』

「ここは何処?

一体、何が起きたの?」

『何が起きたかは分かりませんが、ここは地球上ではないようです』

「……………なんじゃ、そりゃ~~~~~~~~っ!?」

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