森の中 三国 沙也香

 「さあ、沙也香ちゃん、今度は自分で脱ぐんだ。できるよね?」


 恍惚とした表情で、目だけを異常に輝かせながら三国が沙也香に言った。


 沙也香は声をあげることもできず固まってしまった。ただ、涙は溢れるように出てくる。


 「早くしようよ。変な人たちが来ちゃうよ。さあ」


 三国の顔は、沙也香のすぐ目の前にある。お父さんだって、お母さんだって、こんなに近くまで顔を寄せてくるのは希だ。沙也香は目を瞑り、いやいやをした。


 「優しく言っているうちにやろう。――ねっ!」


 三国は思いきり沙也香の髪の毛を引っ張った。


 「いやぁっ! 痛い」沙也香が叫び声をあげる。


 三国は慌てて髪の毛から手を放し、沙也香の口を塞いだ。


 「ごめん、ごめん。でも、大きな声を出しちゃダメだってば。わかるよ、――ねっ!」


 ぐいっ、と力を込めて小さな沙也香の頬を握りしめる。柔らかなほっぺが心地いい。三国の下半身が熱く盛り上がった。


 沙也香の涙が三国の手の甲に流れ落ちる。それも、三国の胸の中にこの上ない至福の感覚を呼び起こさせた。


 だが、その時――。


 「おい」


 不意に、上から声がかかった。慌てて振り返る三国。


 「てめえという奴は――」鬼そのものの形相で、遠藤が立っていた。

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