道の駅 犯罪者 警官 客 関係者

 裏手で銃声がした後、道の駅を見つめていた5人の敵が動き始めた。


 銃を構えながら電光掲示板前のスペースの入口を目指してくる。


 5人とも別々の方向を警戒しながらで、隙はない。


 木戸は敵が動き始めたのをしばらく見ていたが、すぐに身を伏せて隠れた。他の者達にも同じようにするよう身振りで指示する。


 板谷、熊井、遠藤、大熊、佐久間がすぐ側にいた。


 レストラン内を見ると、牧田と藤間がテーブルをバリケード代わりに置き、その影に人々を隠れさせていく。


 小山と岡谷は一番奥にいき、厨房のドアに隠れながら銃を構えていた。


 そこから少し離れた場所に梁があり、大学生4人が身を寄せ合うようにしている。


 電光掲示板のスペースに隣接した面から一番離れた窓の近くに、飛田がいた。銃を持っているが、落ち着きがなく、窓の外とレストラン内とを交互に見ている。


 「どうする? 刑事さんよ」遠藤が木戸に訊く。


 「ギリギリまで引きつけてから撃つ。一斉に行くぞ。連中は道の駅から攻撃されるとは思っていない。虚を突けばいける。俺が合図するまで待て」


 遠藤は「わかったよ」と引きつった笑いを浮かべて頷いた。


 その向こうには、緊張しているのか高ぶっているのかわからない表情の大熊がいる。ランランと輝く彼の目を見て、木戸は嫌な予感を覚えた。






 レストラン内は静まりかえっていた。皆、息を潜めている。音を立てないように気をつけながら、木戸は再び様子を探った。


 敵は大分近づいてきた。攻撃のタイミングはあと少しだと思われる。緊張感が押しよせてきて、胸の奥が締めつけられるようだ。


 板谷と目が合う。彼も胃が痛むような表情をしていた。


 不意に大熊が立ち上がる。


 慌てて木戸が「おい、座れ」と言うが、遅かった。


 大熊は敵の様子を見て「もういいだろう。先手必勝だ」と言うが早いか、叫びながら窓を開け、拳銃を撃ち始めた。


 「馬鹿野郎」と遠藤が叫んだが、大熊の目はすわっている。もう止められない。


 「仕方ない。やるぞ」


 木戸は言いながら小銃を手に立ち上がり、敵に向かって撃ち始めた。


 板谷や遠藤も同じく立ち上がる。


 だが、大熊の銃撃も、その後に続いた木戸達の攻撃も、5人の敵を散らしただけで、一人も倒せなかった。


 逆に、嵐のような銃撃を受け、目の前のガラスが粉々に砕けていく。たまらず身を伏せる木戸達。


 レストラン内で多くの叫び声があがった。


 敵の銃声が一旦止んでも、こちらの乱れは収まらない。






 「絶対にこちらに入り込ませるな」


 木戸が叫ぶように言うと、板谷と熊井はレストランの入り口に匍匐前進し、それぞれ銃を構えて守りの体制をとった。


 ぎこちない。大丈夫か? と思った途端、短い銃声がして、熊井の体が後方に吹き飛んだ。血まみれになって倒れた彼は、既に死んでいる。


 また人々の叫びが高まる。


 板谷は自棄になって小銃を撃った。危険でセオリー無視の行動だったが、それが奏効したのか、敵は攻撃してこない。


 熊井の手から転げ落ちた拳銃を、大熊が拾った。二丁の拳銃を左右それぞれの手に持ち「この野郎」と吼えながら立ち上がる。そして滅茶苦茶に撃つ。


 「馬鹿。座るんだ」


 遠藤が怒鳴ったが、やはり大熊の耳には届かない。


 全ての弾を撃ち尽くした大熊は、拳銃をそれぞれ叩きつけると、別の銃を探す。しかし、見つかる前に蜂の巣にされた。激しく、それでいて乾いた音が響き、そのたびに大熊の大きな体から血飛沫が舞う。


 ボロボロになった大熊の体が倒れると、それまでの叫び声はやみ、逆に極寒の地にいるかのような静寂がレストラン内を襲う。息をするのも躊躇われるようだった。


 ゴトッと何かが床に落ちる音がした。最初にそれが何なのか気づいたのは牧田だった。


 「手榴弾だ。みんな何かに隠れて伏せろ」


 叫びながら、牧田はすぐ側の大岡多恵と小笠原里枝を庇うようにした。次の瞬間激しい爆音が響き、木戸は、牧田達三人が吹き飛ばされたのを見た。


 もはや、誰も声をあげることさえできなくなっていた。


 「畜生っ!」


 遠藤が外に向かって銃を撃った。敵を狙ったわけではない。何かを返さないとこのまま一気にやられるという気がしたのだろう。


 木戸も倣った。小銃を乱射する。そして素早く身を隠した。その行動が、ひどく虚しく感じられた。


 このままでは、やられる――。

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