道の駅 警察 犯罪者 関係者 客 ②

 「俺達にも武器、そう、銃を持たせてくれ」小山が立ち上がりながら言った。


 「何だって?」木戸が目を丸くした。


 「俺達だって、自分の身は自分で守りたい。犯罪者達に武器を持たせるくらいなら、俺達に貸してくれてもいいだろう」


 「やめとけ」遠藤が言った。「素人が銃なんて持ってもろくな事はない。無闇に使って同士討ちなんて事もある。逃げることだけ考えろ」


 「でも」北沢絵里香も立ち上がった。「きちんと教えてくれれば使えるわ。万が一の時以外は使わないと決める。それなら大丈夫でしょう? 私も銃を持ちたい」


 若い女性、それも見た目は優等生的な絵里香が毅然として言ったため、まわりは驚いて溜息をつく。


 大久保や阿田川は特に目を大きく見開いていた。


 だが、戸沢梨沙はそれほど驚いていない。むしろ頼もしげな目で絵里香を見上げている。


 「僕も欲しい」国広が立ち上がった。「僕は家族を守らなければならない。銃を貸してください」


 みどりが目を見開きながら夫を見上げる。沙也香はその膝の上で、キョトンとしていた。


 「駄目だ駄目だ。戦うのは俺達なんだ。なるべく多くの武器を残していってもらう」大熊が威嚇するように叫んだ。「敵は俺達が引きつけてやる。安心して逃げろ」


 「犯罪者の言うことなんて信じられるか」岡谷も立ち上がる。厳しい目を大熊に向けた。


 「何だと、この野郎」大熊も立ち上がり、岡谷に向かっていく。


 「止まれ」東谷が大熊に銃を突きつけた。


 「こいつがふざけたことを言いやがるからだ」


 大熊の勢いは止まらない。東谷も怒鳴らざるを得なくなった。「俺の言うことが聞けないのか! さっきの条件を忘れたか?」


 大熊はふて腐れてドスンと座り込んだ。


 「銃は全部、警察官達が持つ。そして全力を挙げて皆を守る。それでいいでしょう」


 木戸が努めて冷静に言った。


 「警察だって信用できない。そこの人みたいに頼りない警官だっているじゃないか」


 小山に指さされた飛田が、顔を伏せたままピクリと身を震わせる。






 「いいじゃないか」


 沢崎が常と変わらぬ口調で言った。


 全員の視線がそちらを向く。この男がただ者でないことは、民間人も皆感じ取っているようだ。


 「自分で自分の身を守るというのには賛成だ。持ちたいという奴には、銃を貸してやればいい。ただし、拳銃にしておいた方がいい。自動小銃は、初めての人間には扱いは難しい。むしろ持ち歩くことが負担になる。やめておくんだ」


 沢崎が見ると、岡谷も小山も、そして国広も絵里香も反論しなかった。


 「拳銃は、さっき敵からもらったのが5丁だったな。あと、刑事さん達も持っているんだろ? 死んだ刑事さんの分も含めて、合わせて15丁ある。分けようじゃないか」


 沢崎が立ち上がる。


 「ちょっと待て。勝手に決めるな。民間人が拳銃を持つなんて……」木戸が慌てた。


 「今は常識的なことを言っている場合じゃないだろう?」沢崎は落ち着いて言った。そして、再び、銃を持ちたいという民間人達を見る。「敵だとわかったら躊躇せずに撃つんだ。人を殺すことになる。それは重いことだ。だが、その重さにとらわれていたら逆にやられる。一瞬でも迷ったら駄目だ。覚悟はあるな?」


 沢崎の冷徹な視線を浴び、岡谷と小山がごくりと唾を飲み込んだ。国広と絵里香は顔を見合わせてから、戸惑いの視線を泳がせる。


 「覚悟ができないなら持つな。自分自身や家族を守るためなら人殺しにでもなる、という意志があるなら持て」


 ――シーンとした。


 沢崎は銃を持ちたいと言った4人以外の人々にも、ゆっくりと視線を向ける。


 誰もが沢崎と目を合わせるのを避けていた。






 その時「藤間君」と牧田が言った。そして息を呑む。


 見ると、さっきとは別人のような藤間がいた。焦燥しきった表情には、生気が感じられない。衣服は乱れ、そして汚れてもいた。


 「どうしたんだ、藤間君? 何があった?」


 牧田が駆け寄った。すると、藤間はヘナヘナとへたり込んでしまった。


 「どうした? 篠山さん達はどこだ?」牧田が藤間の肩を揺する。


 「殺されました。怪物に」


  虫が囁くような藤間の声だったが、みんなの胸に大きな衝撃を与えた。


 「怪物です」次第に声が大きくなっていく藤間。「赤い目をした、でっかい毛むくじゃらの奴に、篠山さんも、角田さんも、小川さんも殺されました。あれはとんでもない奴です、いくら銃を撃っても通じないんです」


 杖代わりに使っていた自動小銃をポトリと投げ出す藤間。そして、人の目を憚ることなく、その場で泣き崩れてしまった。


 何と言うことだ……。


 愕然とする東谷。


 その目の前に、手錠付きの両腕が差し出された。沢崎だ。


 「最悪の状況だ。外してくれ。あんた一人じゃ守りきれない。俺も戦闘態勢に入る」


 沢崎の目は真剣だった。東谷は戸惑う。


 「あんたに従うことは約束した。一緒に戦おう」


 東谷と沢崎は、しばらく険しい視線をぶつけ合った。

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