道の駅 客 従業員達

 轟音は道の駅にも響いた。売店スペースの一番出入り口近くで相変わらず屯していた大学生達が、一斉に外を見る。


 「な、何、今の?」


 梨沙が目を丸くし、口元に手をやりながら言った。


 「何かが爆発したような音だったな」


 阿田川が、怯えたような顔になる梨沙の肩に手をかけた。


 「ねえ、どこだろう?」


 絵里香が大久保に訊いた。


 「わからない。ちょっと見てこようか?」


 大久保がドアを開けようとするのを「もしかしたら危険があるかもしれない。様子を見た方がいい」と國府田が制した。


 大久保、阿田川、絵里香、國府田はガラス越しに駐車場を眺めた。だが、車はどれも無事のようだった。


 「あっち」絵里香が駐車場の向こう側を指さす。「路上で車が燃えてる」


 他の者が絵里香の視線を追う。大久保は炎上するワンボックスらしい車を見て怪訝に感じた。なぜ車が?


 「ねえ、警察に連絡した方が……」絵里香が言いかける。


 「隣は警察署だよ。すぐに調べに行くだろう」


 大学生達の後ろから國府田が応えた。


 「私が詳しいことを訊いてみますよ」


 いつの間にか、道の駅責任者の篠山が来ていた。その横には、売店の販売員でもある女性二人もいた。


 篠山の視線が、西田に移った。そして心配そうな顔になる。


 「源さん、どうした? 顔色が悪いよ」


 老人は声をかけられて目を開けた。篠山を見ると、不安そうな表情を見せ、一旦両手の平で顔を覆い、そして叩くようにした。


 「何だか、妙な気分なんだわ」


 「何が妙なんだい?」


 「何て言ったらいいのかわからないが、いつもと空気の流れが違うというか、風の音が違って聞こえるような気がするんだ」


 「天気のせいじゃないのかい?」 


 「いんや、そういうことじゃねえ。なんちゅうか、俺の胸の中を重い空気が嬲≪なぶ≫っていくような気がする」 


 國府田と鎌田も西田を見た。確かに顔色が悪い。


 「休憩室で横になるかい?」


 事務所の奥に、万が一急病人が出たときのためにベットがあった。篠山は西田に近寄りながら言った。


 「そういうんじゃねえんだってば」


 西田は立ち上がった。そして、みんなが見ているのとは逆側の、森に面した小窓を見つめる。何か怖い物を見るのを躊躇うように一旦視線を泳がせてから、もう一度窓の外を見る。そして、ふうっと溜息をついた。


 篠山は、そんな西田老人の仕草に何かいい知れない不安を覚えた。館内放送をする直前に感じたのと同じだった。

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