護送車 刑事達 囚人達

 「おい、今撃たれただろ? 何で俺達が狙われるんだ?」


 大熊が立ち上がって言った。


 「座れ。そして黙れ」


 木戸はめいっぱいドスを利かせて怒鳴りつける。大熊が睨んできたが、数秒睨み合うと渋々腰を下ろした。


 「刑事さんよ」今度は遠藤が視線を送ってくる。「俺達だって状況を知りたいんだ。何があったのか教えろよ」


 「わかるわけないだろう。俺も、おまえ達と同じだよ」


 「あんたに説明を求めているわけじゃねえ。運転席と助手席の奴や、さっき顔を見せたパトカーの奴に連絡をとれと言っているんだ。さっきのは間違いなく銃声じゃねえか。ただごとじゃねえだろう」


 木戸だって状況を知りたい。だが、無線も通じない今、こちらから問いかけるのは無理だ。そして、それをこいつらに知られるわけにもいかない。混乱が生じたら、収めることができるか不安だった。


 「誰にものを言っている?」奥から板谷が怒鳴った。彼も緊張していることが窺われた。それもあって、口調が荒くなっている。「立場を考えろ。必要なことがあれば言ってやるから、黙っていろ。これ以上口を開くな」


 あからさまな命令口調に、遠藤、大熊そして後藤と佐久間も不快感を顕わにする。


 緊張感が高まり、若い勝俣や熊井が銃に手をやるのがわかった。目で二人を制する木戸。


 三国の姿が目にとまった。まるで人形にでもなったかのようにかたまり、顔面を硬直させている。


 沢崎を見ると、何事もなかったかのように泰然自若としていた。この男は、やはりレベルが違う。


 木戸はさっきの東谷への信頼を糧に、極力冷静な姿勢を貫いた。この場ではもっとも冷静な人間でなければならない。その使命感だけが、彼の支えだった。

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