護送車 東谷 木戸  ④

 「木戸です。どうしました?」


 声で感じていたとおり、木戸はいかにも県警の刑事然とした男だった。目に強い意志が感じられる。信頼できる男だと感じた。


 「この先の橋が荒天のために上がってしまいました。しばらくは通行不可です。天童分署で待機してもらうことになります」


 「まいったな」


 木戸は首筋に手を当てて表情を曇らせる。奥にいる木戸に似た刑事も立ち上がり、しかめっ面で犯罪者達を見回した。


 沢崎以外の犯罪者達に視線を巡らせる。どこからどう見ても暴力団関係者だと思われる男が、睨めつけるような視線を送っていた。それを軽く受け流し、再び木戸を見る。


 「誘導しますので、ついてきてください」


 「うん、わかった」木戸が頷く。そして、不思議そうな顔をした。「無線連絡をしてくれればよかったのに」


 ずぶ濡れの東谷を気の毒そうに見ていた。


 「それが」東谷は、木戸の腕に軽く手を添え、小声で言った。犯罪者達に訊かせたくないという意思表示だ。木戸はすぐに感じとってくれた。「無線が通じなくなっているんです。原因はわかりません。まさかとは思いますが、妨害電波の可能性もあります」


 「何だって?」


 険しい表情で東谷を見た木戸は、奥にいた刑事に「ちょっと頼む」と言い残して外へ出た。東谷も後を追う。助手席に着いた木戸は、無線機を操作していろいろなチャンネルに合わせてみようと試みたが、徒労に終わった。


 「変だな。どこにも通じない。こんなはずはない」


 運転席にいた警官が、青ざめた表情で木戸を呼ぶ。


 「スマホも通じません。この辺一体に、何らかの電波障害が起こっているようです」


 木戸と東谷は顔を見合わせた。


 「とにかく、分署に急ぎましょう」


 東谷が言うと、木戸達は元の体制に戻った。


パトカーに戻りすぐに発進する。後方から護送車がきちんと着いてくるのを確認しながら進む。


 嫌な予感はやむことなく、むしろこの雨のように強く胸を撃ち続けた。

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