第7話盗賊捕縛

 尼寺で順調に善行を積んでいく守り鏡。


 日々村人を助け善行を積むのはだけでなく、先日は流行り病を予知し近隣の村にも知らせ、皆で協力し必要な薬を用意。被害を最小限に防ぎ多くの人達の命を救った。

 守り鏡の事は多くの人に知られるようになり、沢山の善行を積んだのと同時に新たな敵をも引き寄せる。


 尼僧達が守り鏡のもとに集まり心配そうに話していた。

「前回の飢饉を防いだ際、守り鏡様の事が周辺に知られてしまいました。

 勿論、普通の者達は守り鏡様を奪って力を使わせようとしても、悪い事をした者には善行は行われないと知っているのですが。

 悪人や権力者となるとその事を理解できない者達もいるでしょうね。」

「盗んで売れば大金が得られると思い、守り鏡様を狙う盗賊一味が寺を襲ってくるかもしれません。」

「最近京の方に来たかもしれない盗賊一味がいると聞きました。老若男女の10名の盗賊一味だそうですよ。残忍な者達で盗みに入ると、男は皆殺し女子供は売り飛ばしているとの事です。」

「ナニカ カンジタラ シラセマショウ」

「よろしくお願いします。私達は交代で村に行き、見回りをします。」


 数日後の早朝、守り鏡が光り、満月の夜5人の男達が尼寺に侵入する様子を映し出す。鏡を見ていた尼僧達、蓮が呟いた。

「やはり、盗賊一味がこの寺を狙ってきましたね。満月の夜なら十分間に合います。」

 蓮の言葉に尼僧達は頷く。

「見慣れない老夫婦や家族者が町に、近くの村には5人の男達が現れたと連絡がありました。

 念の為と護衛の方達が尼寺に滞在して下さる事になっていて良かったです。」


 守り鏡、気合を入れるようにカタカタと揺れている。

「トウゾクタチヲ トラエナイト  ギセイシャ コレイジョウ ダシマセン」


 守り鏡と尼僧達、一緒に頑張りましょうと声を上げて気合を入れた。

「ここで盗賊一味を捕まえられれば、これからこの者達が襲ったであろう方達をも助ける事になります。

 善行も多いでしょうね。」

「アマデラ スゴイデス  イルダケデ ゼンコウ タクサンデキマス」


 嬉しそうに輝く守り鏡に褒めらたが、尼僧達は複雑な表情だった。


 微妙な空気が漂う中。守り鏡に、見知らぬ老夫婦と家族が盗賊一味の男達がいる村の小屋へ入る様子が映った。

 暫く小屋の中で話をしていたが話し終わると男達は小屋に残り、老夫婦達は別の村に移動していった。

「仲間は別行動で先に逃げるんですね。逃がしませんよ、老夫婦達とすれ違った村の人がお芋を抱えていますね。

 確かこの村は明日お芋祭りをするはずです。」

「ではこれは、今日か明日の事。急がないと逃げられてしまいます。町の警備兵にすぐに伝えてきます。」

「でも尼僧が外に出ると目立ちます。村人に頼んで警備兵達に私の手紙を届けて貰います。」

 蓮は急いで出て行った。


 守り鏡は重い口調で語る。

「ザンニンナ トウゾクニ ゲンジュツハ キカナイ  カナシバリヲ ツカイマス」


 手紙を受け取った警備兵達は盗賊達の潜伏先の村に被害を出さない為、盗賊の男達は襲撃してきた所を一網打尽。襲撃に加わらない老夫婦と家族者達は、警備兵が見張り隙を見て捕縛することにした。


 翌日、本物の家族のように楽しそうに話しながら、盗賊一味はのんびりと歩いていた。

「今日はこの借りた小屋で休ませてもらおう。」

 村人にいくらかお金を払い小屋へと入っていく盗賊一味。


 小屋の周囲を警備兵達が固め中の様子を窺う。突然小屋の中から大きな物音と男女の悲鳴が聞こえてきた。

 警備兵が慌てて中に入ると、盗賊達が全員床で倒れて唸り声をあげていた。青ざめ冷や汗が出ている盗賊達は、怯えた表情で警備兵達に助けを求めてくる。

「なぜか急に体が動かなくなったんだ。守り鏡を狙った呪いか、呪いなのか、お願いだから、助けてくれ。」

「守り鏡様を盗もうとした報いか。お前たちが心を入れ替え全てを話せば解けるかもしれんが。」

「話します。全て話します。」

 警備兵は盗賊達を縛り上げると気絶させて牢屋に運んでいった。


 守り鏡はふわふわと揺れていた。

「カナシバリ セイコウデス  コレデ トウゾクタイジ アンシンデス」


 満月の夜、盗賊達は守り鏡の予知通り尼寺に侵入してきた。音をたてずに動く盗賊達は部屋へ侵入する。

 部屋で寝ている尼僧を見て盗賊達が顔を見合わせて頷くと、刃物を手にして布団に近づいて行った。


 刃物を振り下ろそうとするのを合図に盗賊達の体が動かなくなる。驚いた表情で床に倒れた盗賊達。

 その様子を隣の部屋で見ていた尼僧達や護衛達が、一斉に部屋に入り盗賊達を殴りつけると縄で縛りあげた。

「やりました。皆無事ですよ。盗賊一味は全員捕まえました。」

 弥生の喜びの声に、皆が叫び声を上げて喜んだ。


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