第19話 スカッシウム
ドラマを見たりウトウトしたりして、定期的に訪れる空腹感をなんとか誤魔化して、長い38時間を乗り切った。
俺たちは腹ペコでマリーのラボに向かった。
マリーは廊下で俺たちを待っていて、その横には双子がすでに来ていた。
スキャンは完全に素っ裸でするという事で、俺は部屋の外で女性陣が終わるのをしばらく待つことになった。
女性陣が終わると、交代で俺が部屋の中に入った。そしてイスに座って機械を操作しているマリーに言われるがまま、俺は全裸になった。
子供のベビーベッドの横には、もう一人のマリーが立って俺を見ていた。
「育児ノイローゼじゃなくて、欲求不満でお前を作るかもな」
「おいおい、どこを見てる」
「反応してるぞ?」
「してねえよ!」
「そうか?」
「早くやってくれ!」
俺はマリーに言われるまま、カプセルの丸い台に立った。人を作るときにも使う特殊なボロンだ。なんとかってスキャン装置も付いてるってことだ。今はガラスも何もなく、床に丸い台と、天井から丸いフタがぶら下がっている。
「ハイ、チーズ」
ピリッと体に電流が走った。それだけだった。
「今ので終わりか?」
「そうだ、終わりだ」マリーは椅子から立ち上がった。「カロリーを摂取しに行くぞ、服を着ろ」
「腹減ったなー」
「子供を頼む」
ベビーベッドの横のマリーは軽く手を挙げただけだった。
ファミレスに行き、みんなで暖かい食事をした。38時間ぶりの。
「それで、食料はどのぐらい持って行くんだ?」
俺はテルルとの旅の準備を思い出した。あの時は2人で2か月分ぐらいの食料を車に詰め込んだ。今度は5人だ。
「今度はそんなに多くなくていいみたいよ」テルルが答えた。
「そうだな・・・」ストルン少佐は上を向いて考えだした。しかしそのまま固まってしまった。
みんながしばらく待っていると、しびれを切らしたのか横にいるプロメが答えてくれた。
「6食で足りると思いますが、もしもの時のために8食にしましょう」
「そんなに近いのか?」
「近くはないですが、速いです」
「速い乗り物か」
「その駅まで行く」
「列車か」
「そこまでは車だ」
「どっちの車で行く?」
入口の駐車場にはテルルと俺が旅した大きな車と、双子の乗ってきた大きなジープが停まっている。あとマリーの小さな車も。
「軍用車に決まってるだろうが、制限速度なんて守っていられるか!」
俺は2人が現れた時の4輪ドリフトを思い出した。
「安全運転で頼む・・・」
「軍曹、モコソを全部貸せ」少佐が俺のほうに手を出した。
俺はゴーグルを外した。ゴーグルは長方形の板にヒュンと戻った。ポケットのサブコンと合体させ、まとめて少佐に渡した。
「お二人も貸してください」プロメがテルルとマリーに言った。
プロメは自分の頭の大きな帽子に手を突っ込み、中から何かを取り出した。丸くて平べったい、茶色いコースターに見える。しかしピカピカとオレンジの光が点滅している。
プロメはそれを、俺の板状にしたモコソの上に置いた。するとオレンジの光が緑に変わった。テルルとマリーのモコソにも同じ作業をした。
「何なんだ? モコソのバージョンアップか?」
俺は聞いてみた。
「おめでとう軍曹、これで軍隊の仲間入りだ!」
「何?」
「3人は軍人という事にしました。これから軍の施設に入りますので」
プロメが詳しい説明をしてくれた。
「そんなこと、簡単に出来るのか?」
「簡単なわけないだろうが!」
「天才か・・・」
「トミサワさんは、トミ・サワという名前になってますので、覚えていてください」
「トラン人ってことか」
「変な名前だな!」少佐が笑った。
食事をした後、俺たちはラウンジに行き、8食分の食料をバッグに詰め込んだ。8食でも5人分だとけっこうな量になった。
食料とちょっとした私物を軍用ジープに詰め込むと、それで準備完了になった。
留守番のマリーが子供を抱きながら入口の自動ドアまで来て見送ってくれた。
「よくわからんが、宇宙に行ってくる。子供を頼む」
「まかせろ、みんなも気を付けてな」
「いってきます」
俺たちは留守番のマリーに別れを告げた。
自動ドアがガラガラと音を立てて閉まった。
病院の中から漏れていた白い光が消え、地下駐車場を照らすオレンジの弱い光だけになった。一気に寒さが体を包んだ。
俺たちはゴツい軍用車に乗り込んだ。ハンドルはストルン少佐が握り、助手席にはプロメが座った。
後ろのシートは左右に2席ずつ、右に俺とテルルで左にマリーが座った。
「ストルン、安全運転で頼むぞ」マリーが運転席に声をかけた。
「了解だ!」
ストルンはゆっくりと車を発進させた。車は左に曲がり、下り坂を降り、直線を走り、また左に曲がり、グルグルと地下へ下って行った。
5階分ほど下った所に脇道が現れた。まっすぐ何処かに続いている。天井に付けられたオレンジの照明がまっすぐ遠くまで伸びた道を照らしている。
少佐は右にハンドルを切り、ジープはその道に入った。
「これが外に繋がってるのか?」
「軍曹は地上から来たって言ってたね、ゲートを2つ通過したろ?」
「あー、たぶん」
「たぶん?」
「トミーはな、救急車のベッドに縛り付けられてたのさ」
「外はまったく見えなかったんだ」
「へー、まあその時も地上のゲートを2つ通ったはずなんだけど、地下にもゲートが2つ在るんだ」
「俺はパス出来るのか?」
「私が先ほど行ったモコソの処理で問題なく通過できるはずです」
「そうだったな、俺は軍人なんだっけな」
「れっきとした軍曹だぞ」
「なるほどな・・・」
「見えてきたぞ」
まっすぐなトンネルの遠くに、緑のランプとオレンジのランプが並んでるのが見えた。ゲートが徐々に近づいてくる。車は飛ばしてはいないが、自動運転よりはかなり速度が出ている。
車はあっという間にゲートまで来た。高速の料金所のような緑のゲートだ。レーンには太い頑丈そうなバーが閉まっていて道を塞いでいる。ゲートには人が入るガラス張りのブースがあったが、中に人影はなかった。
車はゆっくりとレーンに入り、ブースの前で停まった。拡声器がトラン語で何かを喋った。
「乗員の認識番号を確認してるから動くなって言ってるわ」
隣のテルルが翻訳してくれた。
天井からピコーンという音がして、車の前方にある閉まっていた頑丈そうなバーがゆっくりと開いた。どうやら無事に審査を通過したらしい。少佐はゆっくりと車を発進させた。
ゲートをくぐると天井が高くなっていた。
左右に白い壁があり、そこに窓がズラッと並んでいる。窓は3階まである。3階の上は道の天井と一体になっている。
「なんだここは」
「ここはさっき迄いた研究所の職員や関係者の居住区画だな」
マリーが答えてくれた。
「この中がアパートみたいになってるのか?」
「そうだ。日本のアパートよりはかなり広い部屋だがな。今でも人は住んでると思うが、どのぐらいの人数がいるのかは知らん」
「人ってのは、あの鉄の体になって仮想世界に行きっぱなしで、この建物の中にいるのか?」
「おそらくな」
「DNAの研究は完了したんだ。病気も無くなって、患者もいなくなって、みんなすることが無くなった。あの体になって私たちは完成した。研究者たちは仮想世界で幸せな夢を見ながら余生を過ごすだけだ。半永久的に死なないから余生という呼び方が正しいのか分からんがな」
「建物が老朽化したらどうする?」
「いろんな自動機械が維持管理で動いてるからな、大丈夫だろう」
研究者の宿舎のような区画には動くものは何も見えなかった。道路わきに等間隔で並ぶ白い街灯が無人の建物と道路を静かに照らしていた。
そんな静かな道を車は右に左に、何回か曲がった。次のゲートまでの道は一直線ではないらしかった。
「ここは少しだけ迷路になってる。行き止まりが多いんだ。セキュリティーの為だな」ハンドルを握るストルン少佐が説明してくれた。「そこを曲がったら次のゲートだ」
車が角を曲がると、少し先にゲートが見えた。
車はまたゲートで1回停まり、太いバーがゆっくりと開いた。
「今までは軍の管理する重要施設の中でした。ここからは外という事になります」プロメが言った。
ゲートの外は一直線のトンネルだった。さっきまでの高い天井と比べるとすごく低く感じるが、ただのありふれたトンネルだ。左右にオレンジのライトが等間隔に並び、トンネルの道を照らしている。
車はその一直線の道をしばらく走った。
やがてトンネルの向こうに白い光が見えた。トンネルの先に明るい場所があるようだ。
「ここから街なんだ。ここはかなり大きめだな」
「おおおおお!」
トンネルを抜けると空が開けた。天井はすごく高く、遠くまで空間が広がり、左右にも空間が広がっていた。はるか遠くに白い壁が天井までそびえている。見上げると街の天井は白い照明で埋め尽くされ、広がる街は昼のように明るい。
俺たちの出てきたトンネルの出口は少し高台にあり、遠くまで街並みが見渡せた。
街には大小のビルが並び、道が碁盤の目のように走っている。ひときわ大きな20階建てぐらいの白いビルが何本も何本も建ち、そのビルの最上階は高い街の天井にくっついて、街を支える柱のようになっていた。
「ストルン、1回停めて」
プロメが言い、少佐は車を路肩に停車させた。
「地下には街があるとは聞いていたが、こんなに広い空間だとは思わなかった」
「軍曹、テルルとはどうやって来たんだ?」
「地上で、海沿いだな」
「地下は危険なので、それで正解です」
「危険なのか?」
「もしも人工知能の管理する警察ロボに呼び止められた場合・・・」
「呼び止められる?」
「信号無視や速度オーバーや、法律違反は多々ありますが、その場合呼び止められます」
「呼び止められてどうなる?」
「この体は違反です」
「全員、金属の体にせよ、だったな」
「おそらく逮捕され、留置場に入れられます」
「それで?」
「プロメ、向こうからパトロールが来た。緊急で行くぞ!」
「緊急用ライト点灯」
車のヘッドライトとウインカーが点滅し、ピピッピピッと大きな音が外に流れた。それを確認し、少佐は車を発進させた。
「これはな、軍用のサイレンだ。これを点けてる間はスピード違反も信号無視も警察は関与しない。少しスピード出すぞ」
少佐はアクセルを強めに踏み込み、大きなジープは加速した。
「ここから大きな街を4つ越える。5個目の街に軍用列車の駅があるんだ」少佐が運転しながら説明した。
「5個って、けっこう遠いのか?」
「遠いな、ニューヨークとヒューストンぐらいかもしれないな!」
「どのぐらいか全く分からん・・・」
「遠いから覚悟しろってことだ」
車は街の真ん中は走らず、端のほうにあるバイパスのような道をスピードを出して走った。他に動いている車は警察のパトロールと清掃車ぐらいだった。
警察と何回もすれ違ったが、俺たちの車には反応しなかった。中にロボットみたいなのが乗ってるのが見えた。
バイパスの道路脇には、たまにドライブインの店と、その横に公衆トイレがあった。俺たちは何回かトイレに立ち寄り、自動販売機で飲み物を手に入れたりした。無料だ。
「地上の海沿いには有料の物もあったよな」
飲み物を自販機から出しながらテルルに聞いてみた。
「ああいう田舎とかは無料の切り替えよりも先に住人がいなくなったのよ」
「それだけ時代が変化するスピードが早かったってことか」
「そういうことね」
ドライブインの店は食べ物を食べられそうだったが、店で食べることはしなかった。
「もしも食べてる途中でパトロールロボットが店に入ってきたらマズイだろ」
この体でいることにロボットは過敏に反応したりはしないが、職務質問のような場合、危険人物かどうか判定を迫られる状況だとアウトらしかった。
「乗れ軍曹、出発しよう」
「あいよ」
「キサマー、上官になんという口の利き方だー、腕立て100回だぞー」
「はいはい少佐殿」
「よーし、出発だー」
俺たちは車の中で食事をし、仮眠とは言えないほど長く眠り、少佐とプロメは運転を何回か変わった。何かが起こったら困るということで、2人は他のメンバーにハンドルは握らせなかった。
うんざりするような長い旅だった。
4つ目の街を通過中に自動速度取り締まり機が光った。
軍用車だし、撮られた写真は人がチェックしないといけないから、おそらく大丈夫だろうと軍曹が言った。
しかし、しばらく走っていると、後ろからサイレンを鳴らした警察車両が来た。パトロールの青と白と黒のカラーリングの車の運転席には、同じカラーリングのロボットが見えた。
白い顔に丸いレンズの目、ご丁寧に帽子まで被っている。
「変なのが来たぜ」
「まずいな・・・プロメ、どうする?」
ハンドルを握る少佐が助手席のプロメに指示を仰いだ。
「さっきのオービスの写真は人間がチェックする決まりのはずです。ということは、ここの所轄には起きて職務をこなしている人間がいます」
「それで?」
「起きている管理者は全員が女性です」
「だから?」
「女性の警察官で、仮想空間の誘惑に負けずに、真面目に働いている人は、危険です」
「なんで?」
「責任感と正義感で生きてるからです」
「どういうこった」
「傲慢で融通が利かず、押しつけがましく、あきらめが悪く、しつこい。私が1番キライなタイプです」
「それはいいけど、どうする?」
「次の街まで逃げましょう」
少佐がアクセルをフルで踏み込んだ。車はすごい勢いで加速した。
「さっきの撮られた写真の問題点は、おそらく運転席のストルンと私が写っていたことです。肉体がバレました」
パトロール車両はスピードを出して追ってきた。しばらくすると2台になり3台になった。
「増えてるぜ」
俺は後部ガラスの向こうを見ながら言った。
「前にもだ!」
道の先に数台の車両を並べたバリケードが見えた。道を完全に塞いでいる。慌てて車は小さな側道から一般道へ下りた。バイパスを降りるとそこにも2台の警察車両が道を塞いでいた。ガガガッ!少佐はその車両の隙間を車体を接触させながらすり抜けた。
少佐は細い道を右に左に逃げ回った。街の中をぐるぐると走り、警察車両を振り切っていく。
大きめな通りは何か所もバリケードが張られていた。それを細い道を使いながら回避していく。しかし細い道でスピードが出せない分、なかなか警察の包囲網を抜けられない。
「これじゃ次の街まで行けないぞ」マリーが揺れに耐えながら言った。
「武器とか無いのかよ」
「武器を使うとな、向こうも使うぜ軍曹!」
「頼むぜ軍人さんよ」
「お前もな!」
「・・・」
車は細い道を抜け、また大きな通りに出た。左右に警察車両は見えない。
「右へ!」プロメが進む方向を支持する。「全ての警察車両の位置の特定完了」
プロメの大きな帽子のモコソからは小さなアンテナが出ている。そしてモコソのゴーグル一面に何かが表示されているのが後ろからも見える。
プロメの出す指示に従って少佐がキキキーとタイヤを鳴らしながら大きなジープを操っている。
「これ捕まったらどうなるんだ?」
「プロメリの体に逆戻りよ」
「金属の小さい体か」
「DNAも強く変更されるな、犯罪者だからな」
「マジか」
「まじよ!」
「左へ!」
プロメが少佐に指示を出す。また遠くの道が封鎖されているのが見えた。時間が経つにつれて、聞こえてくるサイレンがどんどん増えていっている気がする。
「逃げ込める施設は無いのか?」
マリーが揺れに耐えながら叫ぶ。
「テルルがヤバイぜ」
俺は車の壁につかまりながらテルルの肩を強く抱き、テルルの体の揺れを抑えていた。シートベルトが俺たちが転げ落ちるのを何とか防いでいる。
かなり長時間のカーチェイスでテルルを支える俺の手も限界が近い。
「キャー!」
叫ぶのをずっとガマンしていたテルルが強い揺れに悲鳴を上げ始めた。
車はプロメの指示に従って大きい道、細い道と追跡をかわしている。
細い道から大きな通りに飛び出す。右を見るとバリケードが張られている。左を見るとそこにもバリケードが見えた。とっさに別の細い道に入る。
細い道は2台の清掃車によって完全に塞がれていた。慌てて少佐が車をバックさせる。「ガツン!」車が何かにぶつかった。車の後ろの道を、突っ込んできた清掃車が塞いでいた。
前にも後ろにも清掃車、その向こうに警察車両が集まってくるのが見える。道は狭すぎて大きなジープのドアが開かない。
「どうする少佐!」マリーが叫んだ。
テルルはフラフラ、俺も汗だくでかなりヤバイ。
「みなさん、すいません」
プロメがシートベルトを外しながら後ろを見て言った。
運転席の上部がバカン!と音を立てて開いた。少佐とプロメが立ち上がり、そこから車の外へ出た。
「俺たちはどうする!?」
その質問に返答はなく、ボンネットの上に立った2人の大きな帽子が変形した。後部からアームが2本出て脇の下に回り、帽子から4枚の大きなプロペラが出て、ブオーンという音とともに、すごい勢いで回転し、二人の体が浮いた。
2人は浮き上がり、上空に消えた。
---------------
「ガシャーン!」
少佐はビルの大きな窓ガラスを小さなハンマーで叩き割った。
ここは地下の都市の、天井まで伸びる白い大きなビルの最上階の窓だ。すぐ上には地下都市の天井がある。
2人はここまで上昇した。
遥か下に見える街並みの一角、細い道で逃げ場を失ったジープが見える。
前後を清掃車が塞いで、その外に警察車両が何十台も集まってきている。ライトをピカピカさせた警察車両は街の至る所から集結しつつあるように見えた。
割れた窓ガラスから2人はビルの中に入った。街を支える柱の役目も果たしている天井まで伸びる高いビルの最上階は、食堂と決まっている。
「スカッシウムを!」
プロメが珍しく大きな声でストルンに指示を出す。
ストルンは食堂に備え付けの大きなゴミ箱を探し、走っていってその横のパネルを軍用の頑丈そうな靴で思いっきり蹴飛ばした。
「ガツン!」パネルがひしゃげて中の機械が見えた。ストルンはひしゃげたフタを手でつかんで勢いよく剥がした。
プロメは食堂に備え付けの大きなボロンに走り、モコソで何か複雑な操作をした。
「ピピピピッ!ピピピピッ!」
ボロンが大きな警告音を発し、ロケットランチャーのような大きな筒が吐き出された。
プロメはそのグリップとスコープが付いた筒の後ろのほうにあるフタをパカッと開いた。中には大きめなロケットが見える。そのロケットの横腹にもフタがあり、それもパカッと開いた。
「ストルン、スカッシウム!」
少佐がゴミ箱の機械から取り出した小さな黒いボックスを、プロメに投げた。プロメはそれをキャッチしてロケットの中にセットし、ロケットの中から出ているコードを黒い小さなボックスのコネクタに刺した。そして素早くパタンパタンと2枚のフタを閉めた。
プロメはそのロケットランチャーを窓際に立つストルンに素早く投げた。
ストルンはロケットランチャーをキャッチすると窓の外に身を投げた。
「みんな、ゴメン!」
帽子から出るドローンのようなプロペラで空中に浮いたストルンは、下を見てロケットランチャーを構えた。
下にはジープから這い出した軍曹とマリーが、疲れ切ったテルルを引きずり出そうとしてるのが見える。
ストルンはそのジープめがけてロケットランチャーの引き金を引いた。
「バシュッ!」小さめの音とともにロケットは煙を吐き出しながら一直線に地上に向かって飛んだ。
次の瞬間「ジュボッ!」という聞きなれない音と共にジープと、ジープを取り囲む警察車両たち全てが消えた。直径80メートルほどの空間が、丸く消えた。そしてそこに濃い白い霧が立ち込めた。
霧はスーッと薄くなっていった。そして霧の下の地面には中華鍋のような丸い穴が開いていた。その霧の正体は原子まで細かく分解された物質たちだった。
そしてバチッバチッと青い稲妻が霧の中で光っていた。
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