第6話 ボイスレコーダー
「フー アー ユー?」
突然、彼女は暗闇に向かって話しかけた。そんな、相手に英語が通じるわけ……
「アイム ムーンワーク ロボット」
暗闇から返事が返ってきた。
光を暗闇に向けると、そこに一台のロボットが立っている。
旧式だが、確かに
それじゃあインド隊のロボットが遭遇したのはこいつだったのか?
ボディが傷だらけなところを見ると、かなり長い間、洞窟を彷徨っていたようだ。
彼女はハンスの方を指差す。
「この人をここに運んだのは、あなたなの?」
「はいそうです。この方は、大変危険な状態にあると判断しまして、緊急避難処置でここに運びました。減圧がおさまるまで、私がここで抑えていました」
それじゃあ、あの爪痕は突風に吹き飛ばされないようにしがみ付いていた痕だったのか。
彼女は僕の方を振り返る。
「佐竹さん。この子、ハンスさんを襲ったんじゃなくて救助したんですよ」
「そのようだね」
僕も立ち上がりロボットに近寄る。かなり傷がついてるが、胸の辺りに日の丸のマークがあった。という事は、日本の宇宙省所属か?
ロボットに聞いてみるほうが早いな。
「君の所属はどこだ? いつから、この洞窟にいる?」
「私は日本国宇宙省月面観測隊所属、三菱三式月面作業ロボット
二〇五四年!! まさか!?
「君はなぜここに入った? ここでいったい何をしていたんだ?」
「私が起動した時には、すでに洞窟内でした。なぜここにいたのかは不明です。起動後、私はマスターの命令で出口を捜していました。しかし、マスターの酸素が尽きる前に、出口を見つけることはできませんでした。それ以来、この洞窟内で待機していました。あなた達は日本人ですか?」
「そうだが」
「日本の方が来たら、これを渡すように命令されてました」
ロボットの胸の蓋が開き、中から何か取り出した。ボイスレコーダー?
「君のマスターとは、誰なんだ?」
「月面調査隊隊員、小太刀徹です」
僕の横で、小太刀珠が息を飲むのがわかった。
「お父さん……」
「小太刀隊員はどこにいる?」
「マスターはいません」
「それは分かっている。彼の亡骸はどこかと聞いている」
「分かりません。マスターは私にレコーダーを託した後、洞窟の奥へ入っていきました。私は付いてきてはいけないと命じられましたので、マスターがその後何処へ行ったか把握しておりません」
いずれにしても、この洞窟のどこかに遺体があるのだろう。だが今はハンスを基地へ運ぶのが先だ。
僕達は基地へ引き返すことにした。
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