第6車 動き出す電車と心4

昔から和也はセンスがいい。

絵も上手かったし色彩感覚も抜群だった。よく服のデザインを書いたりしていたのを知ってた人たちは和也はデザイナーになるって思ってたけどデザイナーの道は選ばずプランナーの仕事に就いたらしいと風の噂で聞いていた。

そんな和也と服を買いに来ると不思議と私に似合う服を選んでくれるし気に入る服とチョイスしてくれる。

今もそうだ。淡いオレンジに上品なレース。ワンピースの丈も嫌味のない丈で丁度いい。デコルテ部分にあしらわれたさりげないレースがポイント高く、可愛さと大人っぽさを演出していてとても可愛い。


「これいいじゃん!これにするよ!合わせる靴は同じオレンジ系がいいかな?」


「んー。それよりこっちのスモーキー系のグレーがいいよ。」


「ふむふむ。勉強になりますねぇ。いいよ、これ。ちょうど持ってない色味のパンプスだったし!今日は選んでもらった服とこれとそれ、新作だしこれも買ってご!お会計してくるね!」


「気に入いったなら何より。行ってこい。」


「ありがとっ!!」


「何、デートなん?」


「・・・は!?いや、違うよ!?週末気分転換に遊びに行くだけだし!!」


「ほーん・・・。まぁいいわ、いってこいよ。」


「い、いってくるよ!!」


「あ、待った。買ったげるよその俺が選んだ服。あ、店員さんカードで。」


「え、悪いよ!あ!!ちょっと待ってよ!!」


「はい残念、もう遅い。」


「もう~!!!ありがと・・・。」


「いいって、気分やし。」


「じゃあコーヒー、せめて奢らせてよ。」


「いや、いいや。久々会えてよかったよ。朝早いし帰るよ。また今度で。」


「りょうかーい。あ、そうだじゃあ連絡先教えてよ。」


「あーOK。そしたらこれが俺のIDだから。」


「はーい。メッセ送った。確認してみて。」


「あいあい。じゃあまたな。」


「ん。ばいばい!」


まさかこんなところで会えるなんて思ってなかったからつい声をかけちゃったな。

女神様の気まぐれか、それとも運が向いてきたのか。どちらにせよ嬉しい・・・が。

番犬みたいなのがさっきから睨み効かせてきてるんだよな。と思って振り向くとバッチリ目があった。ぉお、怖。今にも噛み付かれそうだ。


「あの。」


「んー、どちら様?」


「薫さんのなんすか?」


いや、なんすか・・・ってダチだけども。


「失礼じゃないかな、君。仮にも初対面の人に向かって。教わらなかった?」


「・・・すいません。朝倉っていいます。あなたは薫さんのなんですか?」


「一言で言うなら友達かな。今は。」


「今は、ね。」


「そ、今は。」


じーっと見つめてくる朝倉くん。


「じゃあ俺帰るとこだから。バイバイ朝倉くん。」


さて、番犬君への牽制はこんなもんでいいかな、今は。

しかし、薫はどこでこんな番犬見つけてきたんだ?女神様はそう簡単には微笑んでくれないみたいだ。

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