第7車 交わる路線
含みのある言い方で俺の名前を呼んで帰っていった男を目で追っていた。
今は、か。くそ。俺だって。俺だって・・・?なんだって言うんだ。
駅で薫さんを見かけて声を掛けようとしたら俺の知らない男が先に声をかけていた。
そして楽しそうに話しながら駅を出ていくところの見た俺はモヤモヤした気持ちで
つい、後ろを追いかけてしまった。服屋で二人で楽しそうに服を選びながら買い物をしていて。解散をしたところでつい、男の方に声をかけてしまった。男の方は最初から俺に気づいていたみたいだが。
「嫌な奴。」
吐き捨てるように呟いて俺は家へ歩き出した。
まだ二回しか会ったことのないような相手を意識している。その事実が飲み込めなくて。ガラにもなく見かけたから声かけようとか。今までならありえない事だらけで驚いてる。もう少し相手のことが知りたくなって精一杯の強がりで強引に誘ってみたけど、俺らしくなさ過ぎて自分でもかなり引いている。
ガチャン。
周りが静かな分嫌にドアを閉める音が響く。情けないようなイライラするような。
何とも言えない気分になって頭をスッキリさせるためにシャワーを浴びることにした。熱いお湯が体に染み渡ってモヤが晴れるように少しだけスッキリする。
「ふー・・・。」
気にならないといえば嘘になる。ただまだよく分からないという気持ちの方が多いように思う。だから会って確かめようと思ったんだ。その結果が強引に誘う、で自分に呆れているけど。こんなに人に対して興味を持ったことがないかもしれない。だからこそこのもやもやが気持ち悪くて仕方がない。それに誰だ?あの男は。
それにしたって焦りすぎて名前を聞かないという失態は自分でも笑うしかない。俺だけ名乗ってアホみたいだし不公平だとも思った。
でもまたどこか出会う気がする、というよりは会わないといけないような気がする。
それにしてもまずは目の前のことだ。俺は俺の気持ちを確かめる。だって俺には・・・。そこまで考えて思考を一旦止める。
さぁ、寝よう。明日もあるんだから。
電車 瀧川戀 @rentatugawa
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