第9話 十年前……

「あれは…… 十年前の神倉海岸での事でしょ……」

「あ、うん……」そうだ。まさか……


 あの時の……



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 十年前……

 中学二年の夏休みの深夜だった……



 

 茹だるように暑く僕は眠れずに近くの神倉海岸まで散歩に出掛けた。

 徒歩、二分もすれば海岸だ。


 深夜の海岸線は静かだった。耳に届くのは近くを走る車と波の音くらいだ。


 だが不意に沖の方で悲鳴が聴こえた。


『た、助けてェ~ー……』女性の声だ。

 バシャバシャと水面を叩く音がして、どうやら溺れているようだ。他に助けを呼んでいるヒマはない。


『ま、待っててェ~ーー……』

 急いで僕はTシャツとパンツを脱ぎ捨てトランクス一枚になり、真夜中の海へ飛び込んだ。


 深夜の海水はんやりしたが、僕も必死なので構わず彼女の元へ泳いだ。


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