第12話 控え

(監督!? なんで俺が先発じゃないんだよ!?)

 俺は怒りが爆発していた。俺は大切な初戦に先発ではなかった。

「ふう~良かった。これでゆっくりお茶が飲める。わ~い。」

 那覇はベンチでお茶を飲んでくつろいでいる。

「みんな、がんばろう。」

「おお!」

 世界大会は簡単に出場は、日本、アメリカ、ベネズエラ、カナダの4か国。

「プレイボール!」

 日本はカナダと対戦。勝った方がアメリカとベネズエラの勝者と決勝戦を行う。

「でや!」

「カモーン!」

 日本が守って、カナダが攻撃する。試合は初回から乱打戦。1回の表に日本のエースの上級生は3点も取られた。

「ちょっとマウンドが日本と違って感覚が合わないだけだ!? ケッ!?」

「ドンマイ、ドンマイ。」

「そうだぜ。韓国を倒してアメリカに旅行に来たと思って気楽にやればいいじゃん。試合が終わったらタイガー選手にサインをもらいに行こうぜ。」

 日本の選手たちは、子供なので海外旅行にタダで来れてラッキーというぐらいにしか思っていなかった。

「おお! ホームランだ!」

「なんだ~カナダも大したことねえな。」

「そりゃあそうだろう。日本人だってメジャーリーグに何人も行っているんだ。野球のレベルに差はないぜ。ケッケッケ!」

 日本代表の選手たちなのだ。野球が上手なのは当たり前である。1回の裏が終わって3-2。

「さあ、1点差に追いついたぞ。がんばるぞ!」

「おお!」

 掛け声はいいのだが、なんとも気楽に野球をする日本代表の選手たちだった。

「あ、打たれちゃった。この試合に勝っちゃうとアメリカ観光する日が1日なくなっちゃうのよね。今日負ければ、ナイターでニューヨーク・ヤンキーズの試合を見に行けるんだな。本物のメジャーリーグの試合を見たいんだな。」

 決勝戦に進むとアメリカ観光をする日が一日減る。日本チーム選手がやる気が無くなるのも分かる気がする。

「この回は、もう一点ぐらいカナダに取らしてやるか。キャッキャッキャ。」

 日本代表の選手のピッチャーはヘラヘラして、失点するのも計算して手を抜いていた。

 ズドーン! その時、岩を砕くような大きな音がした。

「え?」

 マウンドのピッチャーは音のした方へ振り返る。

 ズドーン!!!

「え!? なんだ!? あの火の玉は!?」

 俺がブルペンで肩慣らしの投球を始めたところだった。

(カナダなんかに負けるもんか! 俺はアメリカを倒して世界一のピッチャーになるんだ!)

 俺の気合は燃え上がっていた。

 つづく。

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