第2話
くだらない事を考えていると、教室まではあっという間だ。
四月に入学し、まだ一ヶ月程度過ごしただけだが、校門から教室まで目を瞑ったままでも
行けるかもしれない。
教室に入ると、窓側後方、そこにはいつもの三人組がいた。
「よっ、おはようさん」
「お、片野! おはよう!」
「あ、りょうた君、おはよ~」
「おはよ」
片野君の挨拶にそれぞれの挨拶で返ってきた。
朝の挨拶は大切だ。
爽やかな一日を送るには爽やかな始まりが肝心だから。
(というわけで、まずは昨日の文句を言ってやろう)
「おい、章吾、お前昨日電話無視しただろ?」
「あー、すまん! 昨日色々忙しくてさ」
「お前、いつもそんなこと言って無視するよな・・・」
「だいじょぶだいじょぶ、通知は見てっから」
「何が大丈夫か知らんが、まぁいいだろう。 俺コーラな」
「あ、じゃあじゃあ、私はカルピス~」
「あたしはオレンジジュースで」
「なんで俺がみんなに奢ることになってんの!?」
片野君のナチュラルな奢られ作戦に他の二人も便乗してきた。
(うむ、実に爽やかな一日になりそうだ)
ちなみに、語尾が緩い方が芳実、さっぱりした言い方の方が紗矢だ。
章吾、芳実、紗矢の三人がいわゆるイツメンになっている。
「よし、じゃあこうしようぜ! なにかゲームをして最下位のやつが奢る!」
突然、章吾が高校生らしい事を言いだした。
「別にいいぞ、まだ時間はたっぷりあるしな」
「ふっふっふ、私に勝とうだなんて、100年はやいよ~」
「こういうのは、言い出しっぺが負けるやつ」
「よし、決まりだ! 内容は、そうだなぁ・・・」
章吾は顎に手をやり、考える。
そしてなにか閃いたのか、自慢げな顔で宣言する。
「やるゲームは、『セッサン』だ! お題は・・・アニメタイトル! ゲームや漫画でも可!」
瞬間、空気が凍り付く。
それもそのはず、ここにいる全員オタクなのだ。
さらに言えば、「私はオタクです!」と公言している人は章吾だけで、他の三人はオタクである事を隠している。
ここで章吾と善戦、もしくは勝利してしまうと「あいつ、実はオタクじゃね?」という疑いをかけられ兼ねない。
そうなれば、オタバレするのは時間の問題。
章吾には勝たず、最下位にもならない。 かつ、オタクだと疑われるような発言はしない。
それが、三人にとっての勝利条件だった。
「それじゃ、俺から始めるぞ!」
章吾以外の三人全員が神妙な顔をしている事に誰も気づかないまま、オタバレをかけた運命のデスゲームが始まろうとしていた。
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