回想

 おれはそういうわけで女性というものが大変、苦手であった。

 そういうわけでというのはもうどれがどうとかいうよりもすべてをひっくるめての感想で、

 いままでいた学校でも、職場でも、ずっと、そうだった。



 たしかにいくらでも、職場のクズどもを凌辱する妄想はできたけど、

 それはどちらかというとおれの「憎悪」の発露でしかなかったのだ。



 おれだってもとは正常だった――いやおれは最後まで正常だっただろう、

 ただ、おれには、憎しみが増え過ぎただけだった、

 おれはあまりに、哀しくて、



 おれはあまりにさみしかっただけ。



 ……だから、おれはもとから女性が好きだったんだ。

 おれはべつに女性が嫌いなわけでもないし、

 男性で、そうしたかったわけでもない。



 ただ、やむにやまれず、……そうしていただけ。




 おれだって、……おれだって、

 女性にさわってみたかったし、

 女性と、ふれあってみたかったし、


 ……そういうことだって、したかったし。




 けどおれは生まれつきなんか無理なんだろうなって思ってたよ。




 だから、神サマ。神サマとかいうのがいたら女神サマがいい、けれど、

 かなうなら、




 おれはたったいちどでいいから憎悪ではなくてそういうことをしてみたかったんだ……。




「――ハイッ。回想回でしたよっ。10話にいちどは入りますねー。魔王サマが過去を回想するのですねー。はーいメタいですねー」

「ふえぇ……? チェアちゃん、なにをゆってるのー……?」

「ハー、この駄犬。はい、名乗りませっ、ココちゃんから先っ」

「なんでえ! ひどい!」

「第一奴隷はココちゃんでしょう?」

「チェアちゃんとことんひどいよ!!」

「いやいやその呼称べつにチェアが考えたものではなくって新生魔王アラタサマの呼び方ですからなにも問題がないですねうんうん、

 ってゆーかね! 原因と問題があるとしたらココちゃんのほうでしょうがあ!? だれがマザリアさまの首を斬り落としてわれらが羽ある者どものふるさと、こころのふるさと、サンタレーナをあのような渦に巻き込んだと思ってたんですかぁあぁん!?????」

「……ふえっ、ふええっ、イレブン、イレブンがひどいぃ、ひどいよおぉ、うう、ココのこと、いじめるのー……」

「いやいや。素でそれ天使殺人を犯した大罪人に言われたくなく、ね?


 ……ハーイ。そういうわけでぇ、この駄犬ちゃん……もといかわいいワンちゃんがココネちゃんですぅ。魔王アラタサマのかわいいかわいいわんこですよう。はい。ココちゃんも私のこと紹介してっ。……イレブンって言ったら殺すわ」

「きゅうん!? ……う、うぅ、この子は――チェアちゃん。名前の由来は椅子だから……」

「ひどい!」

「どっちが!?」



「……と、いうわけで、ふにゃあん。みんな大好き……かもしれない……お子ちゃまフェアリー、チェアですぅ。

 魔王アラタサマの第二奴隷だよ! てへっ! みんななかよくしてくだちゃいねっ!☆彡☆彡☆彡」



 ……そんなやりとりを奴隷ふたりがやっているかたわらで、

 安藤新――あらためまして、新生魔王――候補――アラタの、エルリアへのパラメータ開示Q&Aは、続きます。

 場所はなんかすごくエルフの森っぽい最奥の神秘的っぽいところです。変わらず!



~新生魔王(超有力候補) アラタ・アンドウの純粋なる疑問 そのさん~


Q:

 じゃあなんでおれ転生できたの? すごくね? なんか流行りのなんとか系みたいじゃね???


A:回答者…エルリア


 そう。流行りなのです――というのはさておき、

 それは、……世界があなたを必要としていたから。



 この、平和ボケしていたどうしようもない世界が、――まさしく貴方様こそを必要としておりましたから!



「……へーえ。やっぱ、そうなの?」

「はい!」



 エルリアはめっちゃいい笑顔であった。

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