奥
おれはエルフィレーナの賢森とかいうところに案内された。
けんりん……なんか、言いやすいようで言いにくいような、
健全なようでいて卑猥でもあるような。
森としてはイイ感じ。神秘的っつーの?
木ばっかりで、なんだかよーわからんけど白い小さな光がふわふわ浮いてる感じ。
キノコがあきらかに食用じゃない色をしている。マジでファンタジーRPGみたい。乗っかったら高くジャンプできそうだ。
家も木で作られてて、木こりの家って感じ。
エルフの姿が他になかったのはちょっと残念だった。けど、サンタレーナに来たときの、あの野っぱらではしゃいでた羽のヤツらは、本当にムカついたから、まあいいやって思った。
子どものころに好きだった、RPGの舞台を思い出していた。まさにそのなかを歩いている感じで、不思議な感覚だ。
やっぱエルフの森ってのは、いろんな点で、頭からっぽのロリショタフェアリーの街とは違うんだなあとおれは早速感心した。
トレディはためらいなく歩いていく。
基本この森は道が一本らしい。緩くカーブしているところを見ると、円形にでもなってるのだろうか。というか、ドーナツ状?
「奥だ。まずはわれらが天使女王にご挨拶を願う」
「は? 王はおれだけなんだけど……」
「承知している。……そうか、それでは私の表現がよろしくなかった。非礼を詫びよう。
天使女王が魔王に謁見を望んでいる。お会いいただきたい」
「ふーん、それってぇ、どうしてもぉー?」
「ああ。どうしてもだ」
「まいったなー。おれってそんな有名人だったりする?」
「ああ。非常に有名人だ」
「いやー、おれ的には、こうやって歩いててみんなが出てきてくれない程度じゃー、この世界の有名人とか、あんま、ゆえないかなーとか思ってんだけどねー」
「……有名だからこそだぞ」
「なんだよ。怖がってるとか? はー、さみしい。おれってどこに行ってもさみしいのねえ」
そのまま進んでいく。
心なしか、浮かぶ白い光が増えて、色とりどりのキノコが淡く発光する植物に変わっていく。家は、見なくなってくる。
まさにダンジョンの奥層目指して進んでるって感じ。
「にしてもさー、トレディちゃん」
「なんだその呼び方は」
「トレディちゃんって、エルフっぽくなくね? や、金髪巨乳なのはイメージ通りだからいいんだけどさー、
エルフって、騎士とかやるっけ? やるか、そういう作品もなくはないっけ? あれ?
あとトレディって名前がエルフっぽくねーなーって」
お。
トレディが、なんか、すっげー驚いた顔してる。
「……そちらの世界にも、エルフが、いたのか?」
「んー。まあ。いたっちゃ、いた」
「……エルフがいながらして、なぜ……」
「ああん? なんか言った?」
「ああいや、こちらの話だ。すまない」
「は? そういうのおれ嫌いだなー。さみしくなっちゃう」
「……すまない。今後気をつける」
「マジマジ、気をつけてねー? おれキレるとマジヤベエから」
そしておれはエルフィレーナのもっとも奥の――「天使女王」とやらのもとに、辿り着いた。
……ああ、ちなみにだけど、後ろ向いたら第一奴隷の犬と第二奴隷の椅子も、ちゃんとついてきてた。小さいのに、感心、感心。
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