エルフ
おれはあのあと最終的にサンタレーナの街に黒い雷を落として、滅ぼした。
焼けカスの齧りかけのビスケットみたいな景色だけが、残った。
サンタレーナのクズどもは、みんな、死んだ。
サンタレーナがあったレイリア地方は、サンタレーナ以外マジでなんもなかった。
だから、おれは二人の女の子の奴隷をつれて、旅に出ることにした。
もちろん、世界を滅ぼす旅だ。
おれの今の力なら圧倒的だろう。
しかし、なぜこの力があるのかは、おれ自身まだよくわかっていない。
ただ、わかるのは、この世界ではおれは簡単に暴力を行使できるということだ。
炎、そして雷。この漆黒の右手で。
おれの力は、漆黒の力なのだ。
まあいい、いずれはわかるだろう。
ともかく俺は最強なのだから。
★
サンタレーナの街を出発して、三日が経った。
おれの軽めの荷物はココネに、重めの荷物はあえて幼女のチェアに持たせている。
あ、チェアっていうのは椅子妖精幼女におれが与えてやった名前である。イスというのは呼びづらかったし、チェアと言ってやったほうが女の子らしくて可愛いかなと思ったのだ。
おれはぶらぶらと余裕な感じで歩いていたが、
まだ緑の残っていたエリアに、
おれは右手から直線の高温度炎を投げて、残らず燃やし尽くした。
「……しっかし、歩けども歩けども、なんもねーなー。
おまえらの世界ってホンットつまんねえのな」
「……はい……」
おれの第一奴隷となった犬娘のココネが、茶色の犬耳もしょんぼりとさせてそう言う。
「ホントにこの先に街があんのか? ホントにホントだな? おれもう飽きてきてるぞ?」
「……うん。レイリア地方は、広いから……もう、すぐ、……ソフィリアの森に着くはず。です、……みんなの、教えは、そうゆってた、です」
「サンタレーナはド田舎だったってことかあ。まああんななかよしごっこのキモい街当然そうだよなあ」
おれはどさりとその場に座り込む。
ココネもおれに続いてあわててしゃがみ込み、水筒に入れた新鮮な水とココネとチェアの持っていた非常食を、手渡してくる。
「まずいよなー、これ」
おれはごくごくと飲みむしゃむしゃと食いながらそう言った。ちなみに奴隷どもにはふたりセットでこの半分以下のモノしか与えていない。とーぜんだよな。そういうのは、えらいがわの人間が決めていいことだ。
「おーい、チェア、遅れてんぞー」
「ひゃ、ひゃい……」
すげえ大荷物を背負った、幼女のチェア。
街でまだ使えそうなモンとかおもしろそうなモンとか、ぜんぶ持ってきた。
どうせ、おれが持つわけじゃないし。
あの大荷物で羽つぶれんじゃないだろうか。
そうしたらチェアは妖精椅子でさえなく、ただの椅子になるってことだ。それはそれで愉快だな、と思った。
つか、立ち上がれるかなあ。ま、力尽きたら力尽きたで、さよならバイバイするだけだが……
ザッ、ザッ、ザッ。
……ん? 誰だ。こんな焼け野原に。
「おい。フェアリーの幼子よ」
おれは思わず、おお、と声を上げた。
めっちゃ巨乳の金髪女騎士がそこにいたのだ――しかも耳が尖っているから、きっと、ウワサに聞いてたエルフ族だ!
なんということだ!
エルフの、女騎士の、巨乳の、ねーちゃんだ!!
ねーちゃんはイスちゃんに「大丈夫か。君。どうした」と言って必死に助け上げていた。
イスちゃんはおれを見て必死に、「ごめんなさい……ごめんなさい……」って、謝ろうとしている。
まあ健気なロリ可愛さがあるが、おれはそんなことよりねーちゃんを見ていた。
やっぱ、でけえ。なんじゃあれ。
一応誤解を招かないように言っておくがおれは別に女性の価値をバストサイズで決めるような人間ではない。貧乳の女性にも人権はあるし穴も所有しているのだ。そういえばなんだ穴を所有するっていう表現。そんなドーナツの真ん中の穴はあるのかないのかみたいな話だよな。それはともかく、おれは女性に対しては性格も重視するってところあるし、巨乳好きではない。まあどっちかっていうと巨乳派かなってくらい。DとかEとかが一番手っ取り早く興奮するタイプである。ただそれだけのことである。
つーか、このねーちゃんは、Eよりももっとありそうだし。
だからおれは彼女が巨乳だから即興奮したとかいう誤解をしないでほしい。
こんなに爆乳なのがいけない。それにそのくせ、隠すという配慮が感じられない。実にけしからんヨロイだ。まるで見せつけているかのようだ。つか、見せつけてるんだろうな。よーしそれならおれにも遠慮はいらねえなー。
それと、まぁ、こうゆうのってテンプレってやつじゃん? よく知んねえけど。
耳とがってるから、エルフだろうし。金髪だし、このあたり森だし。
こういう女がなんだっけ、オーク? とかいう種族に捉えられて酷い目にあうんだろ。おれ、知ってるもんねー。
……そしておれはこの世界で最強なわけだから。
じゅるり、とおれは舌なめずりをした。
「ココちゃーん、余計なことはなにっひとつゆっちゃだめでしゅからね。おとーさんいまから口説きに言っちゃうんだからー」
「……うん」
おれは介抱の現場に近づいた。
森が近い。まだおれは燃やしていない森だ。
「この妖精の幼子の仲間か。良かった。サンタレーナが陥落した。もうこの一帯も危ない。私たち気高いエルフ族が守護しているが、時間の問題だ。貴殿も招く。そちらの犬耳の娘も。さあ、行こう」
「は? あんた誰に向かってそれ言ってるか、わかんないわけ? 巨乳って頭が空っぽって、都市伝説じゃなかったんだ?」
「……ん? え、えっと、どうもいま私が聞き間違いをしたようだ、めちゃくちゃな聞き間違いであった。すまない、私もこの大災害で疲労が蓄積している。まさかな。このような善良そうな人間が――」
は?
おれは自分を指さして、明るい声で言う。
「だーかーら、おれだよ、おれおれ! 知ってるでしょお?」
にっかり、笑顔で。
「――サンタレーナとかいうゴミをエコに焼却してやった立派な立派な魔王のアンドウアラタさまだよお!」
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