ロボット

「こんにちは。博士」


『ハカセ。ダレカ、キタゾ』


「博士、何ですか?このロボット?」


「見ての通りの家事ロボットだ」


「ずいぶんと古めかしいロボットですね!」


「どうだ。かわいだろ」


「四角い体に四角い頭。円柱の手足。古典SFに書かれたブリキのロボットみたいです」


『オマエ、ジャマダ。オレ、ソウジチュウ』


「ちりとりとほうきを使ってますよ。あちこち取りこぼしているし。最新型のヒューマノイド型ロボットを買ったらどうですか」


「よく見ろ。こいつは私の作った最新型だ」


「えっ。かなり無駄な動きをしていますが」


「まめまめしく働いているではないか」


『ハカセ。ソウジ、オワッタ』


「・・・。チリを移動させただけの気がしますが」


「いいんだ。きれいにしすぎると免疫の働き場がなくなってアレルギーになる。多少、不衛生なほうが好ましい」


『オマエ、オチャ、イルカ。オレ、オチャ、イレル』


「今どき、急須に茶筒ですか。あっ、お茶っ葉こぼしてますよ」


「細かいことに気にするな」


『オチャ、ハイッタ。ハカセ、オマエ。ノメ』


「あちっ。何ですかこれ。口の中を火傷しました。ロボット家庭内安全管理条項に違反していますよ」


「番茶は熱いに限る」


フーフー。ズズズ。


「博士らしくない発明ですね」


フーフー。ズズズ。


「このお茶、こうばしい香りがしますね」


「おっ。茶柱が立っている」


『ハカセ、イイ、コト、アル。オレ、カタ、モム』


「気持ちよさそうですね。終わったら俺にもしてくれ」


『イヤダ。オマエ、チャバシラ、タッテ、ナイ』


「家事ロボットのくせに断りましたよ。ロボット奉仕義務条項に違反しています」


『シゴト、オワリ。オレ、アソブ』


「積み木で遊んでます。しかもロボットとは思えない不器用さ」


「何でも正確にこなすヒューマノイド型ロボットと暮らしてなにが楽しい。あんなものは人形でしかない。用がない時はエネルギーロスをおさえて突っ立っているだけだ。AIと言えど、効率化を求めて規格化された学習能力にすぎん。それにあれはダメ、これもダメと条項ばかり付け加える」


「博士のロボットは子供みたいな動きをしていますね」


『ハカセ、ヤッタ。ミロ。ツイニ、ニジュウダン。アッ。クズレタ。ハカセ二、ホメテホシカッタ、ノニ』


「よくやった。大丈夫、しっかり見たぞ」


『ハカセ。アリガトウ。オレ、ウレシイ』


「かわいいですね。どんなプログラムを与えたのですか」


「何も与えていない。ただ、一緒に楽しんでいるだけだ」


『ハカセ。オレ、オレイニ、ウタ、ウタウ』






おしまい。

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