猫好きな男

プラのペンギン

猫好きな男

昔、猫を飼っている男がいた。その男はとても猫が好きで、自宅で何匹も猫を飼っていた。足繁く保健所に通っては捨て猫を保護し、野良猫がいると聞けばどこへでも駆けつけ、収入のほとんどを猫に費やしていた。


日に日に猫は増えていったが、鳴き声がうるさいなどの苦情はなかった。男は猫のために家全体を防音のために改築していた。近所の子どもたちがよく遊びに来て猫たちをかわいがっているのを男はいつもにこやかに眺めていた。


路上で死んでいる猫を見つけた男は、自分の服を脱いで、それで猫をくるんで家に連れて帰り、家の庭に埋めた。だからか、男の家の庭はいつもぼこぼこだった。


男は猫たち全部に名前をつけて、それをすべて覚えていた。よく似た兄弟猫でも微妙な模様で見分けることができて、子どもたちから感心されていた。


男は徐々に痩せていった。猫が増えて生活に余裕がなくなってきたのだ。男はより収入の高い仕事を始めた。どんな仕事かは誰もわからなかった。それでも男の体はげっそりと痩せ細っていった。


ある日、男が死んでいるのが発見された。死後1週間は経っていたらしい。猫にウェイトを置いたばかりに自分の生活を疎かにしていたらしい。男の死体の周りには猫たちの亡骸も寄り添っていた。中には子猫の姿もあった。男は栄養失調だったらしい。生きていた猫は保健所に連れて行かれた。


近所の住民たちは、男を正義の人だったとか、可愛そうだとか言っていた。それでも僕は思う。


この男は、酷く無責任な男だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

猫好きな男 プラのペンギン @penguin_32

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ