6話
「この世には神も仏もいないのか……」
俺は悲壮感漂う表情をしながらトボトボと廊下を歩いていた。ちなみに、他の部員達は俺に勉強を教えようかと声をかける者はいなかった。そりゃそうだろうな。部員達は俺の成績の悪さを知ってるから、今更勉強を教えた程度で俺のテスト結果を良く出来る程の頭の良い部員は隊長以外にはいない。ましてや、あの「コングダム」の存亡が関わっているなら尚更だろう……
俺はこの時完全に諦めかけていたが、救いの手は自らやって来てくれた。
「よっ!陽介!どうしたんだ?そんな暗い顔して……」
そう言って俺の肩を叩いて気さくに声をかけてきたのは、俺のクラスの二大イケメンと言われる内の1人、成績優秀・スポーツ万能。母親は元大女優の浅葱
その昔は、オタクとこういうイケメンとは話が合わないと言われていた時代もあったらしいが、オタクでもイケメンや美少女だったりが多い昨今では、全くそういうのが無くなっている。まぁ、とは言え晴人はオタクではないのだが、誰でも分け隔てなく話しかけてくれる人柄の為、俺もよく晴人とはよく話すので、晴人の事は親友だと感じている。
いや、今の俺からしたら晴人は親友ではなく、救いの神様かもしれない。
「晴人ぉ〜!!?助けてくれぇ〜!!?」
俺は隊長の時と同じく泣きじゃくりながら晴人に抱きついた。
「きゃあぁぁ!!?」
ん?今女性のような甲高い悲鳴が聞こえたような?が、俺のそんなふと湧いた疑問は次の瞬間消える事になる。
ガチコンッ!!!!
「〜ッ!!?」
晴人に思いっきり脳天に拳骨をくらい、俺はあまりの痛さに頭を抑えて悶絶する。
「このバカ!?いきなり何すんだよ!!?」
晴人が顔を真っ赤にして怒っていた。うむ……親しき仲にも礼儀あり。やはり、親友とは言えいきなり抱きつくのは良くなかったか……
「全く……!それで……何があったんだよ……聞いてやるからちゃんと話してみろ」
無礼を働いたにも関わらず、ちゃんと俺の話を聞いてくれるところがやっぱりコイツはイケメンだなぁ〜って思う。とりあえず、晴人に相談しよう。晴人は学年二位の成績の持ち主だ。そいつに勉強を教われば俺のテストの結果もどうにかなるはずだ!
「あのな……晴人……実は……」
『晴人くぅ〜ーーーーーーーーーーん!!!!!』
俺が晴人に事情を打ち明けようとした直後、大量の女性の集団が晴人に向かってやって来た。
「晴人君!お話があるの!私の話聞いてくれる!?」
「ちょっ!?晴人君に話があるのは私よ!」
「あんたら!!抜け駆けすんじゃないわよ!?」
「何よ!?このゴミ!?邪魔!!!」
俺はその女性集団に突き飛ばさ、しかも最後に物凄い太った正直言ってブサイクな女に蹴り飛ばされ、晴人から完全に切り離されてしまう。
「ちょっ!?待って!?みんな!?落ち着いて!!?」
流石に女性相手に俺のように暴力で止める事が出来ず、晴人はアタフタしてしまう。まぁ、この数の暴力ではどんだけ晴人が力が強くてもどうにか出来ないだろう。そして、晴人は女性の集団にほぼ強制的に何処かへ連れて行かれてしまった……
「…………ちきしょおぉ〜ーーーーーー!!?やっぱり俺には神も仏もいないのかぁ〜!!?」
ようやく起き上がった俺の虚しい叫びが廊下に響きわたり、それを生徒指導担当の先生に見つかり、こってり絞られ、まさに踏んだり蹴ったりの状態だった……
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