4話

それは、昨日の夜の話……


俺は春に行われた春期実力テストの結果を、どうやって見つけたというのか母親に見つけられてしまったのである。

その結果を見た母親は激怒した。うん。まぁ、俺もそれが分かったから隠していた訳なんだが……何故なら、俺の春期実力テストの結果は、全教科平均点以下で最高で45点。後は軒並み30点台ばかりの点数だったからである。

うむ。まぁ……言い訳ではないのだが……その……春期実力テストの1週間前に……たまたま好きで購入し続けていた漫画の新作が発売して、その……あまりの面白さに一巻から読み直していたら、気づいたらテスト当日だったとかだったという……俺にとっては止むに止まれず事情というのがあった訳なのだが……


が、当然ながらうちの母親にはそんな言い訳通じるはずがない。というのも、うちの母親は今時珍しいまでのオタクを差別するような人種で、俺や俺の妹もオタクなのだが、俺達のオタクをどうにか去勢してやるといつも口酸っぱく訴えてきていた。


だからなのか、うちの母親はとうとう暴挙に出たのである。


「次の夏期テストで全教科平均点以上とれなかったから!あんたの大切にしているコレ!!全部焼却処分するからね!!」


うちの母親は、俺がこの世で最も愛してやまない作品「コングダム」の漫画を全巻を取り上げてそう宣言したのである。





「……なるほど。話はよ〜く分かった。陽介氏の今の心境を含めてな」


隊長は俺の説明を腕を組みながら真剣に聞いた上で、深い溜息をついてそう言った。周りにいる部員達は、俺に同情の視線をぶつけてくる。やはり、この部の人達は、うちの母親とは違い、「コングダム」の良さを分かってくれる人達ばかりだ。


「コングダム」それは、俺をオタク道へと導いてくれた至極の作品である。内容は、何故か地球の生命体が全てゴリラになってしまった地球で、キングになる事を夢見た主人公の青年ゴリラが、キングになる為、様々な仲間との出会いや、別れ、裏切り、時に恋愛を経験しながら成長していく物語である。

登場人物のほぼ全てがゴリラというシュールさながら、その物語性は圧巻の一言で、ついに始まった最終章では、何故地球上の生命体がゴリラだけになってしまったのかの謎に迫るストーリーになっていて、1話1話が見逃せない話なのである。


「陽介氏の気持ちは痛い程分かった。そして、陽介氏が私に何の助けを求めているのかも……ようは、陽介氏の家庭教師になれという話であろう」


「はい!!その通りなんです!!」


隊長は暇さえあれば漫画本やアニメのネット動画を閲覧している生粋のオタクだが、それでも成績は学年一位の優等生なのである。隊長に勉強を見てもらえば、俺が夏期テストで全教科平均点以上とるなんて簡単であろう。


「話は分かった。陽介氏の気持ちは痛い程分かる。だから協力は惜しまない」


「それじゃあ……!?」


「だが!!!断るッ!!!」


「えぇぇぇ!!?そんなあぁ〜!!?」


隊長からのまさかの一言に、俺は素っ頓狂な叫びを上げてひっくり返った。

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