3話
1週間後に夏期テストが行われる。その事実にたいして俺は絶望の淵に立たされていた。それは、テストがやりたくないとかそんな事ではない。いや、まぁ……勉強は苦手だし嫌いな方なのだが……
俺は自分でも足がフラついてる自覚を覚えながらも、「漫画研究部」というプレートが下げられた部室の扉の前にやって来た。
ここは、文字通り漫画を研究し探求する事を目的とした「漫画研究部」の部室である。俺はこの「漫画研究部」に所属していた。その昔は、アニメや漫画を見るオタクという人種は差別され、こんな部など発足されないのが当たり前だったらしいが、今はアニメや漫画などは日本の一文化として受け入れられ、オタクという人種の差別もなくなり、こういう部が存在する学校も多いと聞いている。それなのに……あの旧石器時代の頭の母親め……!
俺は母親に言われたある事を思い出して、思わず憎しみでドアノブをギュッと握りしめてしまう。俺はすぐに「いかん。いかん。冷静になれ」と自分に言い聞かせて扉を開けた。
「ん?陽介氏?どうした?賭け事に負けそうになってるヘイジンのような顔をしてるではないか?」
扉を開け、中に入った俺にそう第一声をかけてきたのは……小学生の女の子……
ではもちろんない。身長が低く、髪型もポリシーなのか常にツインテールにしている為、小学生女児に間違えられるが、これでも、俺の2つ上の先輩で、誕生日も4月なので現在18歳。この「漫画研究部」の部長で、部員から「隊長」と呼ばれて親しまれている雨宮
ちなみに、隊長が言った「ヘイジン」とは、主人公のヘイジンが危険な賭け事ばかりに挑戦しまくる漫画の主人公の名前である。そのヘイジンが賭け事に負けそうな時の顔が酷く、コアな読者は毎回その顔を楽しみにしていたりするが、俺の顔はそんなに……酷いのだろうな……それだけ、今の俺には絶望しかないのだから……
あっ、どうでもいいと思うが、俺は周りの人に陽介と呼んで欲しいと頼んでいる。なんせ、田中っていう苗字はいっぱいいるからな。田中って呼ばれると、どの田中を呼んだのか分からないからな……って、そんな話はどうでもいいか……
俺は何も言わずに隊長に近づいて……そして……
「だいぢよおぉぉぉ〜ーーーーーーーーーー!!!!?だずげでぐだざぁ〜ーーーーーーーーーーいッ!!!!!!?」
涙と鼻水を垂らしながら隊長にしがみついて助けを願った。
ここが部室で、俺が事情もなしにこのような事をする人物ではないと知る者ばかりでなかったら、俺は今頃警察に突き出されているだろう。しかし、今の俺にはそんな事を気にしている余裕はまるでなかった。
「ちょっ!?陽介氏!!?いきなりなんなのだ!!?分かった!?分かった!?一旦落ち着け!!?話は聞くから!!?一旦落ち着くのだぁ〜ーーーー!!?」
俺に急にしがみつかれ、焦って抜け出そうとする隊長。それを逃すまいと必死でしがみつく俺。ようやく我に返った部員達が、俺と隊長をなんとか引き剥がすまでこの攻防は続いた……
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