2話

女の子の告白を断り、疲れたような表情をした晴人が溜息をつきながらこちらまでやって来た。もう何回も告白されているとは言え、女の子の涙を何回も見るのは辛いのだろう。


「よぉ、お疲れさん」


「ん」


俺は晴人にそう言葉をかけたら、晴人は一言そんな気のない返事を返す。そんな疲れきってる晴人に苦笑を浮かべつつ、俺は先程買ってきたペットボトルの紅茶を渡す。


「ありがと」


晴人は律儀にお礼を言って受け取り、キャップを開けて紅茶を一口飲んだ。


「これで、1年女子の大半はお前に告白した事になるな。おめっとさん」


俺がおどけたようにそう言ったら、晴人はジト目で俺を睨んできた。


「……陽介ってやっぱり底意地悪いよね。知っててそういう事言うんだから」


晴人はしばらくジト目で俺を睨んでいたが、やがて諦めたように溜息をつくと、両手を髪の毛に触れ始めたので、俺は慌てて晴人に制止の言葉を投げかける。


「おい!?こんな場所でマズくないか!!?」


「大丈夫。この辺にもう人がいないのは確認済みだから」


……いつの間にそんなのを確認したのやら……まぁ、晴人の事を考えれば、それだけ気を配る必要があるんだろうが……


そして、晴人は改めて自分の髪の毛に触れ、そして……


パサッ!!


先程までの茶色のショートヘアのカツラを脱ぐと、そこから茶色の若干ゆるいウエーブのかかった長い髪の毛が現れた。その髪の毛から漂ってくる香りから目の前にいる人物の本当の性別が明らかにされる。

本当に、毎回不思議に思うが、ちょっとカツラを外し、髪の毛が長くなっただけで、目の前の超絶イケメンが、超絶美少女になるのだから驚きである。


俺はチラッと、「高校生を応援!」と書かれたポスターを見る。そのポスターには、晴人の双子の妹で、若手期待の新鋭JK女優「HARUKA」の姿があった。女子高生ながら女優業をやる事から、このポスターのモデルに選ばれたらしい。

そして、今目の前にいるのはその「HARUKA」に瓜二つの人物だった。いや、まぁ、双子だから「HARUKA」と晴人はかなり見た目はソックリなところが多いのだが……


だが、真実は違う。俺の親友、超絶イケメンの浅葱 晴人という人物は本当は実在しない。そう。俺が全校生徒がイケメンだと思っていた晴人の正体は……今をときめく若手期待の新鋭JK女優「HARUKA」こと、浅葱 晴香あさぎ はるかなのである。だが、この事実を知っているのはこの学校では俺と数名の教職員だけである。



俺がこの事実を知ったのは、今現在は二学期の秋真っ只中だが、あれは……夏休み前の夏期テストが行われる1週間程前の話だ

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