第5話

 黒に近い様な深みのある紅いボディの車体。キレ長のヘッドライトという本人に似合わないフルスモーク車の中で煙草を吹かしていて、薄いピンク髪がフロントガラスから差し込む光に照らされている。莉桜達はその車に見覚えがないらしく、誰の車だろう? という顔をしていたのを放置して、僕だけが車に走り寄って行った。

あきら! 何でここに居るの?」

「あ、セナ実はね……。いや、とりあえず僕も車から降りようかな」

「あ! ごめんね、邪魔だったね。僕はあっちに居るから、ゆっくり来てね」

 そう言って、少し離れた所で僕を待っていた莉桜達のところに戻る。

「セナさん、あの車はどなたの車ですか?」

「なんでここにいるかわからないけど、紅葉達も知っているよ。あの車の持ち主は、もう少しで降りてくると思うよ?」

「え? 私達の知っている人……?」

「誰だろう? 教えてくださいよ。セナさん」

「もうちょっと待とう。ね?」

 ゆっくりと車を降りた晶がこっちに向かってきた。

「おまたせ、セナ。紅葉君、昨日電話ありがとね」

「大丈夫だよ。というか、え? 紅葉昨日途中で離れたのって」

「あ! ごめんなさい。セナさん会いたいかなって思ったから電話で呼んじゃいました」

「私、晶さんと久々に会えた! というか、あの車って晶さんの車だったんですか?」

「そうだよ、格好いいでしょ? セナと一緒に買いに行ったんだよ」

「恰好いいです! あ、でも、セナさんの車も見たことないんですよー。なぜか教えてくれなくて」

 僕の車を知っているのは晶と、姉貴ぐらいかな? 姉貴も買った当初の仕様しか知らないだろうけどね。

「そんなことは置いといて! 晶! 何でここに居るのか説明して!」

「え? 紅葉が昨日電話くれてね? 明日小田原行くからお昼頃に小田原城の駐車場にいてくれません? って言われてね。セナに会いたいから来たんだ」

「え? ありがとう」

「なんか、セナさんって、晶さん来てからテンション高いですね」

「え、そうかな? まぁ実際、海外飛び回っている晶が僕のためにここに来てくれる事が嬉しいから、テンション上がっているのかもね?」

「なんか素直なセナさん可愛いですね」

「ありがとう、でいいのかな?」

 確かに僕のテンションは少し高いのかもしれない。そもそも、滅多に会うことが叶わない人間が、僕に会うためだけにオフを潰して小田原に来てくれるだなんて、嬉しい。来てくれるだなんて、嬉しい。晶と逢えた感情が僕の心を一杯にしてくれる

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