Ⅱ.第3話 蒼

 

 ソウの怒りは、とどまることを知らないかのようだ。

 それが何だろうと、目に付いたものを片っ端から投げ飛ばす。


 壁にぶつかり、ことごとく破壊されていく様は、彼の感覚を楽しませる。

 ただし、手加減なしだから壁がその犠牲になるのも時間の問題だ。


 日本での拠点は、いくつか用意してあるが、郊外にあるここは居心地がよかった。

 西洋風の外観をしたペンションで、空き家になっていたのを買い取った。


 周囲にあるのは物言わぬ樹々だけ。

 怪しげな男の二人組に近寄る者もいなかったから、人目を気にする必要もないし、五感に煩わしい物も少ない。



「はぁっ」

 物を投げるのにようやく飽いたのか、セイはファブリックを張ったソファにドカッと座る。

 ざらりとした肌触りを手のひらに感じて、顔をしかめる。

 これも壊すべきだったか、と。


 彼は立ち上がると、窓へ向かった。

 掃き出しの窓は、微かな光を拾って彼の端正な姿を映す。

 その青白い顔に浮かんだ酷薄な表情までも正確に。


 蒼は、ハーフの首をひきちぎって、頭を串刺しにした絵を想像して、その笑みに残虐さを滲ませた。


「オレの物に手を出したらどうなるか……思い知らせてやるからな」




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