Ⅱ.第3話 蒼
それが何だろうと、目に付いたものを片っ端から投げ飛ばす。
壁にぶつかり、ことごとく破壊されていく様は、彼の感覚を楽しませる。
ただし、手加減なしだから壁がその犠牲になるのも時間の問題だ。
日本での拠点は、いくつか用意してあるが、郊外にあるここは居心地がよかった。
西洋風の外観をしたペンションで、空き家になっていたのを買い取った。
周囲にあるのは物言わぬ樹々だけ。
怪しげな男の二人組に近寄る者もいなかったから、人目を気にする必要もないし、五感に煩わしい物も少ない。
「はぁっ」
物を投げるのにようやく飽いたのか、
ざらりとした肌触りを手のひらに感じて、顔をしかめる。
これも壊すべきだったか、と。
彼は立ち上がると、窓へ向かった。
掃き出しの窓は、微かな光を拾って彼の端正な姿を映す。
その青白い顔に浮かんだ酷薄な表情までも正確に。
蒼は、ハーフの首をひきちぎって、頭を串刺しにした絵を想像して、その笑みに残虐さを滲ませた。
「オレの物に手を出したらどうなるか……思い知らせてやるからな」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます