「修学旅行、親友、使者」

「ねぇねぇセナ! 今週末いよいよだよ!」

「んあ? 唯か……なんかあったっけ?」

「なんで忘れてるのさ!修学旅行だよ修学旅行!」

「あー……行けるのかな僕……」

「えっ……あー仕事」

 そんな話をしていたのはもうずっと前の中学生の頃、まだ僕がアイドル活動をしていた頃だった。

 一応姉貴には許可取って修学旅行に参加できる事にはなってるけれど、実際どうなるかわからない……。

 そういうあやふやな状態で親友の唯に対して『行けるよ』と断言出来ない自分が居た。

 結論で言えばきちんと途中までだが、修学旅行には参加出来た。

 まさか修学旅行先に使いの者が現れて、そこでインタビューをされるとは思わなかった。今思えば、自由が効く様にやはり中学卒業と共に無期限活動停止を掛けるべきなんだろうかと思い始めたのはこの頃だった。

 唯も残念がってたし、やっぱりこういう行事物は一から全部楽しめる生活になりたい。そう願ってしまった。

 故に姉貴と姉妹喧嘩で「僕は中学卒業を期に無期限活動停止をする」と言い切ってい待った。

 高校生活を謳歌したい自分と仕事していたい自分を比べた時に、高校生活を謳歌しながら、姉貴が持ってる会社の株で悠々自適に暮らしたいと願ってしまったんだろうな。

 『復活してください』とか、『この映画に出てみませんか!』といったオファーの使者は止まなかったけれど頑なに断り続け、高校生活を謳歌しながら、自分でカブを弄り始めたのも高校生活始まってすぐだった。

 キャンプ生活をしながら使者から逃げ回る為の手段として『原付』というのは大変便利な道具だったけれど、信念としてスクーターには乗りたくなかったからカブを選んだ。

 何気にカブは山のように日本中を走り回っているし、女子高生が乗るには確かにちょっと変わっているけれど、やっぱり『スーパーカブ』を選んで正解だったことなど山のようにある。

 燃費が良いから維持も安く済むし、バイク通学NGだったけど、そこは僕の知名度をちょっとイケナイ方向に活用してOKを貰い、逃げ回るための手段として高校からもOKを貰った。

 あの子だけ狡い!って何度言われたかわからないけれど、教員達や、親友である唯も僕を庇ってくれたのが唯一の救いだった。

 ただ、卒業文集のタイトルが僕のサインなのは頂けないなぁっていう感想を得てしまうのは、中学時代にアイドルをやっていたせいなんだろうか?

 逃げ回る忙しい私生活と楽しい高校生活を謳歌し、修学旅行もきちんと使者も来ないでクリア出来たのは本当に良かった。

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