習作―結婚記念日

「ぅにゃー…おはよー凛君」

「おはよう戀ちゃん。いい天気になってよかったね。」

「ぅん。あ!デートか!天気でよかったー!」

「おとぼけ戀ちゃん可愛いなぁ」

「ぅるさい!もー!」

「さて、今日はなんの日でしょうかー?戀ちゃん分かるかなー?」

「んー…なんだっけー…ボクの誕生日じゃないしー、凛君の誕生日でもないよね?」

「可愛い戀ちゃんに大ヒント!数年前の今日はなにしたかな?」

「あー!そっか、今日結婚記念日か!去年まで結婚記念日付近は凛君が海外に個展開きに行ってて居なかったもんね」

「それについてはごめんね。その代わりって言ったらアレだけどマンション買って同棲しながら学校通えたんだから、許して、ね?」

「凛君、結婚するとき言ってくれた言葉覚えてる?すぐ同棲出来るようにするって。最初の個展でまさか全部売って来ると思わなかったー!」

「いやー買ってくれた人がいい人でよかったよ。お陰でこんな一等地にマンション買えたんだし。どうする待ち合わせする?それともお家から一緒に行

く?」

「付き合ってたときみたいに待ち合わせしたい~!おめかしして行くから1時間後に駅前の喫煙所に居て!」

「はいはい、戀ちゃんは仕方ないねぇ。どんな服着て来るのか楽しみに待ってるね。」

「お待たせー♪待たせちゃったかなー?」

「全然。戀ちゃんがどんな格好してくるのか楽しみで仕方なかったしね」

「よかったー♪ どうかな、この服、ボクに似合ってるー?」

「その服サイズ合っててよかったよ。去年の結婚記念日のプレゼントにしてよかった。可愛いよ」

「ふふん、どやーってね♪」

「さて、戀ちゃん、キセル新しいの買おうよ」

「えー、凛君のお下がりがいいー!」

「だーめ、戀ちゃんにプレゼントしたいからさせて?」

「うー…凛君が自分が使うつもりで選んでくれるならいいよ。」

「はいはい、戀ちゃん、そろそろ行こうか」

「はーい♪」


――――――――――――――――――


「かっこいいキセルあってよかったー♪」

「よかったねー戀ちゃん。選ぶのに時間かかっちゃったし、お昼いく?」

「うんー!お昼~♪何食べるのー?」

「パスタにしようと思ってね。良い雰囲気のお店、予約してあるんだ」

「わー!嬉しい!いこいこー!」

「いらっしゃいませー」

「すいません、予約してた依藤ですけど」

「個室ご予約の依藤様ですね。ご来店ありがとうございます。ではご案内い

たします。」

「良い雰囲気のお店だー♪」

「ありがとうございます。お部屋はこちらになります。ごゆっくりどう

ぞ。」

「あれ?凛君、メニューはー?」

「もう決めて、頼んであるよ。大丈夫、戀ちゃんが頼むだろうもの頼んであるから、予約時にね。」

「ほぇー!さすが凛君!」

「失礼します。ボンゴレビアンコとペペロンチーノと白ワインをお持ちしました。ワインはお任せとのことでしたので、こちらを選ばせていただきました」

「ありがとう、店員さん。じゃあ、戀ちゃん頂こうか?」

「いっただきまーす♪」

「ねー凛君、そっちのペペロンチーノひと口頂戴!」

「よっと。ほら戀ちゃんあーん」

「あーん♪おいしー!凛君はい、お返しのあーん!」

「ありがと、あーん。そっちも美味しいね。ここまた来ようか。」

「失礼します。当店からデザートのサービスをさせていただきます。」

「あーっ!凛君みて!ティラミス!おいしそー!」

「ふふふ、良かったね戀ちゃん。そういえばここ、僕の作品置いてあるの気

づいた?この部屋にも置いてあるけどさ、入り口に置いてあるほう、戀ちゃ

んのサイン入ってないんだよね。ちょうどあの喧嘩の時に作ったやつだから

さ…」

「あー、凛君と喧嘩してた時のやつかー。言ってたねー。あの時サインな

しで売っちゃったって。せっかくだしサインしてく?」

「戀ちゃん、いつものサインだからお願いできる?」

「いいよー!凛君との共同制作になるのが一つ増えるー♪」

「すいませーん、店員さーん」

「失礼します。何かございましたでしょうか?」

「オーナーさんって今日いますか?少し話したいんですけど」

「了解しました。すぐオーナーを呼んで参ります。それでは失礼します」

「失礼します。オーナーの玄埜げんやです。依藤様、何か私共に不手際がございま

したでしょうか?」

「玄埜さんが、オーナーでいいのかな?いやね、ここにあるこの絵と、お店入ったとこに飾ってる絵、同一人物が創ったもので、何故入り口に置いてある方にはサインがないのか。その点について購入時バイヤーから聞かされてるのかなと気になってね。」

「いえ、特に。ああでも何やらサインする人がいなくなってしまった貴重な作品とは聞いております。」

「ほらやっぱり戀ちゃんがぼうさんからいなくなったと思われてる。実際に

は翌日帰ってきたのにね」

「依藤様…?何故売主の名前を…?」

「それはですね、あぁ見せた方が早いですね。玄埜さん、紙とペンお借りし

ても?」

「えぇ、どうぞ」

「ありがとうございます。ほら戀ちゃんサイン書いて、いつもの、ね?」

「はーい♪出来たよ凛君」

「Linnel…えっ?依藤様、このサインは一体?」

「まぁ、僕たち二人であの絵を描いたLinnelというわけです。」

「ボクがサイン役で、凛君が作品作りしてる創造者!」

「それで、入り口に置いてある作品にサインさせて欲しいなと。後日作品取りに来て、家にある機材でサインしないといけないんだけどね?」

「畏まりました。いつでも大丈夫ですので、よろしくお願いします」

「よかったね凛君♪」

「そうだね、戀ちゃん。チェック、お願いします。」

「美味しかったね、戀ちゃん。また今度作品取りに行くときも一緒に行って食べようね。」

「うんっ♪今度はカルボナーラ食べたいなー♪」

「戀ちゃんさっき買った煙管使って見せてよ。葉は僕が持ってるやつあげるから」

「いいよー!あったらしいきせっる~~♪」

「そうだ、あそこ行っていいかな?」

「がざいやさん?いいよー!何か買うのー?」

「そろそろ作品作る道具変えなきゃいけなくってさ。いい機会だし、行きたいなと思ってね」

「いこいこー!れっつごー!」

「ごめんくださーい、津村さんいますかー?」

「いっぱいがざいがあるー。いつ来ても不思議な雰囲気ー!」

「ハハハ、いらっしゃい、今日は何を買いに来たのかな?」

「ホルベインDUOって入荷してますかね?」

「DUOかい?ちょっとまっとくれ、なんとなく昨日仕入れたのがあったはず

だ。…ああ、あった。他に何か買うのかい?」

「いえ、今日はDUO買って、それで終わりです。他の画材は後日また必要になったら来ますね。」

「あいよ、今日はどうする?」

「配達でお願いします。」

「あい、わかったよ。いつもの住所でいいんだろ?」

「ええ、大丈夫です」

「ねーねー、凛君。これ欲しい!」

「それは、筆?かな、それと絵の具かな。サイン用かい?」

「んーん、お絵描きしたいの!凛君の横で!」

「はいはい、戀ちゃんは可愛いなぁ。あ、津村さんこれも配達でお願いします。」

「お願いしまーす♪」

「凛君の欲しいのあってよかったねー!ボクも凛君の横で絵を描ける~♪」

「ふふ、よかったねぇ、戀ちゃん。戀ちゃんがお絵描きして、自分で納得出来るものができたら僕がサインしてあげるよ。Leninlって。」

「ほんと!わーい頑張るぞー♪」

「さて、どうする?折角だからサンシャイン水族館でも行こうか、ほら最近テレビでやってたやつ、この天気なら見れると思うし」

「んー。あっ、空飛ぶペンギンのやつか!みたいみたい!あっ、手つーなご♪」

「はいはい、戀ちゃんは可愛いなぁ」

「はぁ~~すっごいねー!本当にペンギンさんがお空飛んでるー!可愛いー!」

「おぉ、これはすごいね。戀ちゃん写真撮ってあげよう。ほら空飛ぶペンギンを背にして、ね?」

「やたっ!わーい♪ペンギンさーんしゅーごー!」

「戀ちゃんすごい本当にペンギンが集まってる…しかもなんか自分の一番い

い顔してます!って感じでいるし。ま、いっか、撮るよー?はい、チーズ。

ほら撮れたよ。それより戀ちゃん後ろみてみ?」

「えっ?わぁっ!?ペンギンさんいっぱい!すっごーい!みんな可愛いー!」

「ほら、あんまり居ると戀ちゃんもペンギンも熱中症なっちゃうからペンギ

ンとバイバイして。戀ちゃんは晩御飯は何食べたい?」

「んー、凛君のことだから、なんかピックアップしてるでしょー?」

「バレた? まぁ六本木のレストランなんだけどさ。どうかな?」

「夜景見れるの!?」

「見れるよ?それでいいかな?」

「うん!おてて繋いで!れっつごーなのだ!」

「はいはい戀ちゃんはやっぱり可愛いなぁ」

「戀ちゃん楽しそうだね」

「楽しいもん!ぬいぐるみ買ってもらっちゃった♪」

「あれだけ欲しそうな目してたらそりゃ買うよ。可愛い戀ちゃんが欲しいって顔してるんだしね? だけど戀ちゃんに渡すのはホテルの部屋までお預けだよ。」

「えーなんでー!抱っこしたい~!」

「ダーメ、転んだりしたら危ないから。転んで怪我する戀ちゃん見たくない

からお預けです。」

「えへへ♡ありがと!」

「さて、着いたね。」

「わくわく♪」

「いらっしゃいませ。ご予約のお客様でしょうか?」

「ええ、依藤で予約してる者ですが」

「お二人でご予約の依藤様ですね。お席にご案内いたします。こちらへ」

「ありがとう、行こうか、戀ちゃん」

「はーい!やっけいー!ごはーん!」

「こらこら、落ち着いて、ね?」

「わかったー!」

「お席は夜景が一番見える場所をご用意いたしました。」

「ありがとう」

「本当に夜景綺麗な席だね。戀ちゃん」

「ねー!あ、ボク達のお家があるー!」

「ほんとだね。そろそろお肉の方のメインが来るかな?」

「失礼します。牛フィレ肉の秋の吹き寄せ風 バルサミコソースでございま

す。」

「これもおいしそー!」

「戀ちゃんさっきから料理が来るたび同じこと言ってるね。可愛いなぁ」

「てへへ、美味しそうに見えるし、本当に美味しいし、凛君、こんな素敵

なお店連れてってくれて、ありがと。」

「どーいたしまして。ほら、食べないと、ね?」

「はーい♪ お肉やわらかーい!おいしー!」

「おいしいねー。この後はデザートで、その後ホテル行くだけなんだけど、

バーラウンジで飲もうか?」

「ウィスキー飲めるっ!わーい!」

「戀ちゃんはウィスキー好きだねー」

「凛君が教えてくれたからねー!ビール苦いし、日本酒辛い気がするし…

ウィスキー好き!いっぱい飲むのー!」

「はいはい、戀ちゃんは可愛いなぁ」

「本日のデザートはオペラでございます。」

「綺麗なケーキだー!」

「ふふっ、戀ちゃん、これプレゼントだよ」

「なにー?ネックレス?…あれ?これ凛君がつけてるやつじゃないの?」

「僕とお揃いのもの、用意したんだ。前に綺麗って言ってたの思い出してね。」

「凛君、覚えててくれたんだー。付き合ってた頃の話だよー?」

「付き合ってた頃にあげれなかったからねー。」

「わーい!大切にするー!あとでつけてねー!」

「はいはい、戀ちゃんは可愛いなぁ…さて、行こうか?」

「うん!バー♪バー♪おさけー♪」


――――――――――――――――――


「予約していた、依藤だけど。バーラウンジって何時迄開いてますか?」

「ようこそいらっしゃいました。依藤様、この度は当ホテルを御利用頂き、

まことにありがとうございます。お部屋は606号室になります。バーラウン

ジは午前2時まで営業しております。」

「ありがとう、行こっか?」

「うんっ!おさけー♪何飲もうかなー♪」

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