第3話

「いやぁ、セナは元気だったかい? 遅れて申し訳ないね。反対意見潰すのに手間取ってね。いやぁ、参ったよ」

「反対意見? 何を今度は押し通したんだ姉貴は」

「君に部下を持たせる話をちょっとね」

「本当に僕に部下を持たせる気かい? 名前だけの役員だぞ?」

「そこはほら新設部署として、ね?」

「『ね?』じゃないよ……」

 咲夢から聞いていたとはいえ、本気だったとは思いもしなかった。この時期に辞令出すのは酷だと思うんだけどな……。

「戀姉、セナ姉に一体誰を付けるつもりなんだ?」

LCBリーフチェリーブロッサムの二人にしようと思ってる。アイドルの扱いは元アイドルにしてもらおうかなってね」

「LCB?何それ」

「セナ姉……テレビ見なさすぎだよ。覚えてる?うちの入社式、セナ姉の時以来の報道入れたの」

「あぁ、今年のやつ? あ、あの二人?」

「そうそう、あの二人だよ」

「なるほどねえ。で、いつから僕が面倒見るの?」

「今日からだよセナ」

「はい? 今日からだって?」

 反対意見押し切って即日で辞令出すってのは流石に阿呆だと思うんだけど。確かに一般部署だと現役アイドルの扱いに困るのはわかるよ。僕もその口で名前だけの役員だし。でもそれとこれとは話が別だと思うんだがなぁ……。

 姉貴にさせられたアイドル。高校入学を機にアイドル活動ほぼ無期限休止という形をとり、高校卒業と共に、この会社の名前だけ役員になったけど、今更後輩アイドルの面倒見る事になるとはねぇ。

「で、セナちゃんに異論はあるかい?」

「姉貴が僕の名前をちゃん付けする時は異論認めないでしょ。いいよ、面倒みる」

「ありがとう。良かった。これから来るからね。咲夢、呼んで」

「はいはい。じゃあ連絡してくるね」


 現役アイドル二人を面倒見るって言ったって何させればいいんだろうか……。どうせなら、『アイドル』の看板使えたら面白い事できそうだけど、流石に姉貴が許さないかな。

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