第583話 一足先に領地へ戻る

俺はクシーさんに後を託し、素材集めの舞台をその場に残して帰還した。

ミルテも一緒だ。

あ、ちなみに80層のボス部屋でボスを仕留めてから戻ったんだがな。


そして、俺はヴィキューナをはじめ、いろんな素材を工場に置きに行った。


・・・・

・・・

・・


「・・・・という訳で、これがダンジョン産ヴィキューナだ!」


今工場の素材を扱う場所に、ドンドン素材を出している。


それをミルテが一生懸命仕分けしている。

仕分けた傍から、必要な素材が担当者によって運ばれていく。


何せ持ち込んだのが俺だからな、買取とかの面倒な事は一切なし。


ただ、ヴィキューナは・・・・布を扱う面々も遠巻きに眺めるだけだ。

「おいどうした?君の担当だろう?」


俺は布を作り前の糸をつむぐ係のメンバーに声をかける。

「あ・・・・その・・・・私、ヴィキューナって扱った事が無くて、自信無いです・・・・」


あ・・・・そうか、高級素材だし、滅多に出回らないから、こういう事もあり得るのか。


仕方ない、イベッテに確認・・・・三津枝の方がいいか?


そう思っていると、イベッテが目に入った。

「イベッテ、ちょっといいか?」


「あら?もうダンジョンからお帰りですか?」


「ああ、すまんがヴィキューナを扱える職人はいるか?」


「え?ヴィキューナですか?あの馬っぽい生き物の?」


「ああ・・・・糸をつむぐ担当に聞いたら、扱った事がなく、自信がないと言われた。」


「まあ・・・・あ、別の部署に布を扱う職人がいるので、そちらで確認しましょうか?」


「ああ、頼む・・・・」


俺はヴィキューナを回収し、イベッテの後を進む。


暫くすると、絹の機織り部門にやってきた。


イベッテが誰かと話している。

「あ、領主様、ヴィキューナでございますか?」


一寸年齢の高めな女性だ。40半ばぐらいか?

「ああ・・・・あんたはヴィキューナを扱えるのか?」


「一応何度か扱った事がございますよ。これでございますか・・・・」


俺は手にしていたヴィキューナを渡す。


しばらく眺めているその女性は・・・・

「流石でございますね。とても良いヴィキューナでございます。領主様は高レベルの採取持ちでしょうか?」


そうだっけ?

「そんな気もするが・・・・何せ、俺以外ではなかなか見つけられない素材もあるからな、きっとそういうものなんだろうな?」


「なるほど・・・・ヴィキューナをお預かりしてもよろしいでしょうか?」


「ああ、頼む。その机の上に置くから、後は任せる。」


「畏まりました。それで、用途はいかがなさいますか?」


「そうだな・・・・コートもいいし・・・・と言うか何か案があるなら、任すが?」


「コートもようございますが・・・・やはりここは女性向けの、ストールやそうですね・・・・ジャケットもよろしいかと。」


「まあ、任す。ストールは・・・・先に一つ確保しとこう。佐和が欲しいと思うからな。」


「まあ、奥様へのプレゼントでございますか?」


「ああ、あっちで持ってたらしいからな。」


「畏まりました。持てる能力を最大限に発揮し、最高の布地にして見せます。」


「ああ、頼む。ただ、無理はするな。それと、失敗してもまた素材は手に入るからな。」


「お心遣い感謝いたします。」


さあ・・・・出来上がりが楽しみだ。


「あ、もういかな?」


「ああイベッテ、すまないな。」


「今お時間は?」


「あ?ああ、何かあるのか?大丈夫だぞ?」

「それはよかった・・・・最近ご無沙汰ですからね、ささ、行きましょ?」


そうだっけ?そう思いつつ、イベッテと手をつなぎ、どこかへ向かった・・・・

何処へって?察しろよ?

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