第598話 さらに翌年

世津の息子を看取った翌年、最後まで生きていた佐和の息子が、死に瀕していた。

あいつは中々のやり手だった。

俺が敢えてまとめ上げなかった国を一つにまとめ上げ、新たな連合国家を築いたからだ。


いや・・・・連邦だったか・・・・


クチタ連邦。


俺が色々と見せた本から得た知識を元に、あいつは代表としてうまくやっていたようだ。

ある程度の歳になり、俺にとっての孫に代を譲り、あいつは悠々自適の生活を送っていたようだ。

しかし時はある意味残酷で、俺のような神になってしまえば老いる事はないが、普通は老いる。


そしてついに、息子の寿命が尽きようとしている・・・・


「士門さん?ちょっといいかしら?」

「・・・・会いに行きたいのかい?」

「どうしてわかるのかしら?」

「一体君とどれだけ付き合いがあると思ってるんだ?」

「・・・・もう忘れちゃったわ・・・・」

「世津の時もそうだったが・・・・看取りに行くか?」

「ええ・・・・そうさせてもらえると、うれしいわ。」


俺は佐和と死に瀕している息子の元へと向かった。


・・・・

・・・

・・


召喚組の妻としては、三津枝の子供には看取りに行ってやれなかったのだが・・・・


実はこれには裏がある。


世津の時は、俺と世津が直接会いに行ったのだが、実は会えないわけではない。


直接会うのが難しいと言うだけで、姿は・・・・ある程度の制限があるが、会話もできていたのだ。


神としての能力で・・・・だ。


人は、信仰する神を敬い、その見返りに力、知識・・・・等を得る事がある。

それを利用し、会話が成立するのだ。

それと・・・・俺の作ったアイテムが・・・・まあ見て見ぬふりだったのだが。


きっとノエラが見れば、没収しただろう。

そして・・・・こちらからは向こうを見る事ができた。


向こうからは、見る事ができない・・・・ただし、こちらから繋げてやれば見る事ができるのだが。


そうやって、数年に一度だが、やり取りがあったようだ。


本当は、現世に未練が残ってしまい、神としての力が発揮しにくくなるから、ノエラは反対しているのだが、俺が思うに、それは違う。


何もせずにただ自分の産んだ子が死んだと聞かされるより、自分の子供を最後まで見てやる事の方が、いい事だってある。


因みに三津枝の子供は商売がうまかった。


世津の子供は俺の領地を守り、三津枝の子供は俺が築いた店を発展させ、佐和の子供は新たな連邦国家を築いた。


ああ・・・・そして俺の子供は例外なくどこかの街以上の領主となり、孫やひ孫は、小さな領地の領主となっていた。

そうならずに商売のみをしている者もいたようだが・・・・


・・・・

・・・

・・



「来ると思っていましたよ。」


意外にも元気そうだった。


「久しぶりね。死にかけてるみたいだから、看取りに来たのよ?」

「母さんありがとう?神はどうなんだい?年を取らないのも善し悪しじゃないの?」

「ふふ・・・・そうね・・・・どんどん知り合いが死んでいくのを見るのは辛いわね。」


「・・・・母さん頑張ったね。」

「あら?それは私のセリフね。」


「最後に・・・・お父さん、僕はどうだった?」

「・・・・俺が避けた事を、よくぞやり切った!自慢の息子だな。」


「そうですか・・・・よかった・・・・ああ・・・・最後にまた2人会えてうれしいですよ。よかったら僕の子孫に・・・・2人の子孫でもありますけど・・・・会ってやって下さい。」


そう言って息子が指さすと、壁が無くなり、控えていた数十人の人が現れた。


「おじいさま、ありがとう!ご先祖様に会わせてくれて。」

「お前が今の連邦の代表だろう?まあいい・・・・私の父と母だ・・・・今は神をやっている。」


「・・・・本当は会うはずが無かったのだがな・・・・」


「息子はもうあと数分で旅立ちます・・・・皆さん、お別れを・・・・」

先程までの元気がウソのように、一気に死相があらわれる息子。だが、その表情は晴れやかだった。


「・・・・ありがとう・・・・」


何にありがとうと言っているのかは分からなかったが、息子は満足そうな表情で逝ってしまった・・・・


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