第502話 密偵からの報告

アウグスティンからの報告は衝撃的だったようで、ヴィヴィは寝込んでしまった。


あ、俺の所に来てから、一度もパールメース帝国に戻ってなかったうえに、父の死に目に会えなかったのだから。


葬儀に出るわけにもいかず・・・・


今は兄に慰めてもらっているが、何時までもそうしてはいられないだろう。


そして、数日後・・・・


密偵が戻ってきた。


「口田様、パールメース帝国は、どうやらこの国と戦をしたいようです。」


はあ?なんでそうなるんだ?


「おかしいな。しかし考えれば考えるほど変だな。今この状況下で、俺達に勝てると思ってるのか?」


「私にはわかりかねますが、どうも勝ち負けはあまり関係なさそうです。名目は、前皇帝の弔いとか。」


「弔いってどういう事だ?」


「はあ・・・・前皇帝の死因は病死となっておりますが、実は毒殺。それをよりにもよって、前皇帝の長男であるアウグスティン様を犯人に仕立て上げ、そのアウグスティン様のおられる、クチタ領を攻める算段のようです。」


・・・・何という言いがかり。


しかも、どうやって離れた場所に居るアウグスティンが、警備の厳重な皇帝を暗殺できるのか。


突っ込みどころ満載だが、パールメース帝国の民はそんな事に気が付かないほど、洗脳されてるのだろうか。


「あ、ご苦労だったな。戻って休んでくれ。」


「は。では、失礼します。」


密偵が戻っていく。


はあ?しかしどうすべきか?攻め入ってきたら、迎え撃つのか?


 俺は実際にはパールメース帝国に行った事がないし、あっちの情勢も直接見ていないので対策が取りにくい。

なので、アウグスティンとヴィヴィと話をする事に。


・・・・

・・・

・・



「さて、パールメース帝国を乗っ取った2人組が、こちらに戦を仕掛けてくるらしいが、どう対応すべきと思う?」


「父の仇!こちらから攻め入るべき!」


「それじゃあ駄目だよ。ヴィヴィ、よく考えてごらん、皇帝の死がこっちに関係ない事は明白なのに、アウグスティンが暗殺したと信じている、今のパールメース帝国の内情を考えると、ある程度対策はとっているだろう。」



「だ・・・・だけど・・・・」


「難しい問題だけどね、一度向こうから攻め入ってもらえた方が、こっちとしては都合が良い訳だよ。」


「どうしてそうなる?」


「だってさ・・・・最初から、この国には、アウグスティンはいなかったんだ。そうだろう?」


「えっと・・・どういう事なの?」


「アウグスティンは、ボースマ王国か、どこかの公国に居る事にしてしまえば、本来いないはずの相手がいると思い込んだ帝国が、大義名分のないままこっちを侵略するんだ。そうしたら、正義はこちらにあり!となるだろう?」



この辺りの対策を、向こうがどうしてるかに、よるんだけどな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る