第490話 口田士門・神になる

俺はこのままではまずいと思い、工房の鍛冶スペースに移動し、熱に耐えられる窯の中に入った。

今は窯を使っておらず、冷えている。

最近鍛冶していなかったのが幸いしたか。


どんどん高温になっていく身体を、どうにかしたいが、無理だ。わからない、どうしたらいいか。


すると、ノエミがやってきた。


「何て事。生身の人間が、珠を食べるなんて。普通食べられないのだが、どうやって食べた!口田士門?」


「果物のつもりで・・・・間違って食べた・・・・らしい。」


「食べ物を見ずに食したのか!」


「作業しながら・・・・適当に手にしたものを・・・・食べたんだ・・・・トレイの上にあった果物と思って・・・・」


「もう焼けちゃって果物ないじゃないの?何やってるのよ?」


女神が俺の所にやってくる。


「駄目だ・・・・来るんじゃない!お腹の子に影響が・・・・」


「大丈夫よ?貴方のその状態は、私の珠を食べたからなのよね?ならもうしばらく我慢!」


何が我慢なんだ?



すると女神が俺に濃厚な・・・・ディープキスをする。


何かが流れ込んでくる。



どれだけの時間が経ったのか、気が付けば俺は元に戻っていた。

いや、戻ったと思ったと言うべきか。


俺は自分の身体に変化があったのに気が付かないまま、暫く時を過ごした・・・・


「ああ、何て事を!本当に信じられない・・・・女神、あんたも何やってんのよ?もっと違う方法もあったでしょ?」



「だって、つい・・・・」


「口田士門にどう説明するの?」


「えっと、その・・・・向こうから聞いてきたら、適当に?」


「・・・・・女神・・・・女神、何も変わらんのだな、君は。」


「ええ・・・・でも・・・・一柱でも多い方がいいんでしょ?」


「無論そうだが・・・・口田士門には早すぎた。」


・・・・俺は、自らの意志とは関係なく、ついうっかりで神になってしまっていた。


・・・・

・・・

・・


本日の食事当番、獣人3姉妹。


「姉貴!ジャガイモ取ってくれよ!」


「はいはい・・・・ってないわねえ?ちょっと待ってて、旦那さまに聞いてくるわ。」


ナタリーにじゃがいもを取ってと言われ、無かったので口田の元へ向かうエミリー。


口田が工房に居る時間だったので、工房へ向かうと、口田は机の上で珠とにらめっこしていた。


「旦那さま?台所にじゃがいもが無いのですが、何処にあるかご存じないかな?」


「あ、ああエミリーか。ジャガイモが無い?ちょっと待ってろ・・・・っとうわ、バラかよ。」


異世界売買で購入したジャガイモ、バラバラに机の上に落ちてしまった。


口田は袋にじゃがいもを入れなおす。



「何に使うんだ?」


「さあ?ナタリーが何かに使うけど、聞いてないの。」


「そうか?俺も気分転換に、料理するか。」


・・・・

・・・

・・



「久しぶりのキッチンだ。」



「あらあ?ご主人様、料理するのかしらあ?」


「ああ、ちょっと気分転換にな。あ、そうそう、折角ジャガイモ持ってきたんだ。ジャガイモで何か作るよ。」


俺はジャガイモを茹で、どんどん切っていく。


切ってつぶして、そこにコーンとか、豆とかを入れる。


うん、ポテトサラダ。


簡単にできたぞ?


本日の食卓には、久しぶりに俺の料理が並んだ。

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