第465話 とある少女の物語 その5

「待たせちゃった?はるばるここまで来てもらってごめんね、待たせちゃったよね?」


女神がそう言ってくる。


顔が期待に満ちた・・・・そう、凄くキラキラさせている。


私は顔が引きつらないよう最大限の努力をしながら、女神に・・・・一見すると、何処にでも居そうな雰囲気の少女・・・・ではないな。

顔が驚くほど整っているからだ。

何度かモニターで確認はしていたが・・・・ハイエルフである私より顔が整っているのではないかしら?

そんな印象。


だけど、そこは自分を押さえないと・・・・

演じ切らないと。



「いいえ!ここには用事があってきたので、待つなんてとんでもないの!それより貴女に会えて私がどれだけ嬉しいか分かる?」


そう、嬉しいのは間違いがない・・・・女神が思っている嬉しいとは真逆だけど。


「私もうれしい!抱きしめてもいい?はあはあ・・・・」


・・・・既に暴走している。

当たり前か・・・・何せドアノブの薬には・・・・あれは毒ではない。

万が一毒であれば恐らくそれなりのスキルがあれば、ばれるだろうから、媚薬に近いのを塗っておいた。


身体の中に入り込めば、血液と反応し、頭を・・・・脳を活性化させ、興奮させるものだ。

他にも脳に働きかける副作用があるけれど、それらが上手く作用している様で重畳。


「嬉しいわ・・・・抱いて?」


絶対に触られたくない・・・・私の本音だ。

別に女体に興味が無いわけでは・・・・そう言った経験もある。

それに外観だけはこの女神・・・・いいえ、そうではない、生理的に・・・・この女神は仇なのだ。

抱くのが手段であれば、受け入れねばなるまい。


女神は食いついてきた。



「貴女と抱き合ってるなんて、夢のよう!はるばる会いに来たかいがあったわ!」


・・・・かなり長い間調査をしたけれど・・・・女神の名前はなぜかわからないままだった。


なので、私は女神を貴女と呼んでいるし、メールも貴女以外の記載はしなかった・・・・

今回の行動の一番の不安は、調査で分からなかった部分があった事。

何故女神に個人名が無いのか・・・・あるのかもだけど、何故分からないのか・・・・それが分からないので、ひょっとしたら何か私の知らない何かがあるのでは・・・・そんな不安もあったけど、今はもう手遅れ。



「私がこの1週間どんな気持ちで待っていたと思ってるの?あーもう我慢できない・・・・」


女神がそうつぶやく。


「あ、あのね、私こんな幸せを感じた事ないのよ?嬉しいわ、貴女に抱かれるなんて・・・・」


そう、今私は幸せを・・・・一族絶滅の・・・・一族の悲願、女勇者と女魔王との関りをなんとかできる寸前まで来ている。これを幸せと言わず何というのだろう・・・・


しかし、今女神を抱きしめているけれど、違和感はある。

体温が無いからだ。ひょっとして生命体ではない?

何かを間違えた?

そう思っていたけれど、それは取り越し苦労だった・・・・

それは女神の衣服に秘密があったからだ。

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