とある少女の物語

第461話 とある少女の物語 その1

とある少女の物語


私の母は勇者と名乗る女性に殺された。

あれだけ強かった母が、なすすべもなく、一方的に。


父も、おじい様も、おばあ様も、叔母さまも・・・・


突然住居に侵入してきた人間達。

叔父が、私たち子どもを逃がしてくれた。


だけど、執拗に追ってくる人間たち。


叔父が時間を稼いでくれたけれど、どんどん差が縮まってくる。


そして、とうとう追いつかれた。


すると、私達と一緒に逃げていた従兄弟が、兄が、弟が、果敢に人間に・・・・私達を逃がす為の時間稼ぎをしている。


女は私だけ。

どうして?何があったの?私達が何をしたというの?


そして、逃げていたと思っていたけれど、どうしてか我が家に戻ってきてしまった。


あ・・・・目の前で・・・・母の首が飛ぶ・・・・


「ふう・・・・やっと終わりました。さあ皆さん!私は任務を遂行しましたよ!」


「おお!流石は女勇者だ!魔王を討伐せしめるとは!」


「何を言っているのですか?魔王ではなく女魔王ですよ?魔王は勇者、女魔王は女勇者でしか討伐できないのですよ?」


・・・・この人何を言ってるの?母が女魔王だっていうの?


私が涙でほとんど見えなくなった目で、目の前の女性を見る。


あれ?何か・・・違和感が。そう、女勇者と名乗っている女性から、力が流出しているのだ、この私に向かって。



そのせいか、私の力が増していく。


そして・・・・女勇者と名乗る女性と目が合ってしまった・・・・



「おや?まだ生き残りがいたのですか?小さな女の子ですが・・・・死んでもらいましょうか。」


女性は私に剣先を向け・・・・切りかかってきた。

だけど、その剣が私に触れる事はなかった。


「がああ・・・・い・・・痛い・・・・・わ・・・・私の右腕が・・・・」


咄嗟に振り払った腕が、女性の腕に当たった?


バターを切り裂くかのように、女性の腕が飛んでいく。


「え?ちょ!何怪我してるんですか?勇者さん!」


「うぐ・・・・・気を・・・つけろ・・・・手練れだ・・・・」


左手に別の剣を取り出し、再び襲ってくる。


私は咄嗟に

「いやー!」


と叫んだ・・・・


そして私は気を失った。


・・・・

・・・

・・


目が覚めると、辺り一面何もない荒れ地だった。


そして・・・・人間だったものの一部が、転がっている。


あ、あの女性が・・・かろうじて生きている。


「うぐ・・・・油断した・・・・勇者の使命は、、魔王を討つ事だ・・・・それが成されれば、女神様にその力を返すことになるが・・・・まさか討伐直後に・・・・そうなろうとは・・・・それに・・・・一人の勇者が討伐できる魔王はただ一人・・・・君は・・・・新たな魔王なのかい?」


もう虫の息だ。


「家族の命を奪っておいて何その言い草。勇者?魔王?何それ?私達はただ静かに暮らしていただけなのに・・・・」


「勇者と魔王の因縁は・・・・女神によってもたらされると聞いている・・・・その鎖を断ち切るには・・・・女神に・・・・この繋がりを・・・・断ち切らさせるしか・・・・ない・・・・」


・・・・色々聞きたい事があったけど、この女性は死んだ。

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