第386話 ヴィヴィ・ゴットフリッド・グランルンド・パールメース

パールメース帝国において、ヴィヴィ・ゴットフリッド・グランルンド・パールメースを知らぬ者いないだろう・・・・


歳は23、現皇帝の正室の2番目の子供。


彼女は力こそないが、その魔力は飛び抜けており、国内最高の魔術師ではないかとささやかれるほど。


だが彼女はそんな事には頓着しておらず、常に兄の傍に居ようとしている。


兄を慕っており、常に兄の居る所へ突撃してくる。いわゆるブラコン?


現皇帝と次期皇帝に唯一遠慮なく何でも言える存在。


他の者が反対意見を言おうものなら、即首が飛ぶ。それがたとえ皇帝の弟だろうが関係ない。


そんな彼女だが、その美貌のせいで色々面倒事に巻き込まれるので、常に認識阻害のアイテムで、能力のほか、外見も変化させている。


本来燃えるような赤く長い髪の毛は、ボサボサのくすんだ茶色に認識させ、切れ長の少しきつめの目は、単なる細目にしか見えない。


特に目を引く外観ではない・・・・と思わせる姿だ。


だが・・・・これこそが今の本当の姿。

あの美貌がどこへ行ってしまったのか・・・・


・・・・

・・・

・・


話は2年以上前に遡る。


彼女は相変わらず付きまとってくるオス共に辟易しながらも、公務をこなしていた。


そんなある日、見知らぬ2人組が帝国へやってきたのだ。


最初はまたオスが来たのか!と思っていたが、どうも様子がおかしい。


この2人組に会う人々が、会う前と、あった後に、明らかに態度に違いが出るからだ。


違和感を感じたヴィヴィだが、何がおかしいのかがわからず、様子を見る事に。


しかし、事態は悪くなる一方。


その2人組が姿を現し半年もすると、帝国の主だった大臣が、悉く2人組の言いなりになったからだ。


そして、この頃から、彼女の健康状態が悪くなった。

何とかしなくては!と思うのだが、身体がだんだん言う事を聞かなくなる。


そして・・・・ある日、とうとうベッドから起き上がれなくなってしまった。


こうなるともう、どうにもならない。


弟が、兄が、叔父が、叔母が、母が、そしてついには父である皇帝までも・・・・


何とか魔道具の力を用い、兄や父に意見をしたが、聞き入れてもらえず、遂には長く平和だった隣国へ攻め入ってしまう。


こうして2年ほど経ったある日、次期皇帝であるヴィヴィの兄は・・・・アルムデナ公国へ渡っていたが、ここで異変が。


動けないヴィヴィだが、魔道具で兄の様子を把握していた・・・・のだが、なんと帝国兵が何者かによって敗れ、兄も捕らわれたのだ。


何とかしなければ・・・・だが動けない。

しかし、あの2人組が居なくなって・・・・暫くして、徐々に体が動くようになっていた。

最近は何とか、身体が起き上がるようになっていた・・・・


こうしてはいられない。体力、精神力ともにかなり消耗するけれど・・・・


滅多に使わないスキル、空想・・・・・・・・これは、彼女だけが持つ特殊なスキル。


頭で思い浮かべた事が、現実になるのだ。かなり制限があるが。


思い浮かべたのは彼女が兄の元へ駆け付ける、という行動。


すると・・・・動けないはずの彼女は、ベッドから起き上がり・・・・兄の元へと瞬間移動をしていた。


気が付けば、兄が目の前で倒れているので、駆け付ける。


しかし、綺麗な顔をした女性2人に捕まり、引きはがされる・・・・


そして、2人の女性と共に、1人の男性に目がいく。


それは何故か・・・・あの2人組と同じく、黒目黒髪の、そんなに濃くない皮膚をしていたからだ。


・・・・この人が兄に何かした?


「貴様が兄に何かしたのか!」


私はその男に怒鳴ってしまった。

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