第365話 困惑

どう見てもまともに食べていなさそうな集団に見える。


これは・・・・流石に何とかしたいな。


俺は世津と三津枝に声をかける。



「兎に角、目の前にあんな状態の人々がいる。今後の事は・・・・また考えるとして、今は、助けたい。向こうで食事を用意してやってくれないか?」


「そう言うと思いましたが・・・・いいのですか?今後問題になりますよ?」


「ああ、何とかなるだろう・・・・それと、多分あの様子だともう数日ちゃんとした食事はしてなさそうだから、胃に優しいの頼む。」


「じゃあ、うどんかお粥かな?」


「そうだな・・・・出来るか?」


「鍋が・・・・相当要るね。」


「待ってろ・・・・」


俺はそう言って、異世界通販をポチる。


大きい鍋・・・・180リットル?もっと・・・・あるかもだが、扱えるか疑問だな。直径1メートルか・・・・


俺はこれを5つポチる。


そして・・・・讃岐うどんの業務用を兎に角ポチる。一袋20キロとか・・・・


ダシとしょうゆも適当に。


後は・・・・料理スキルを持ってる2人と、獣人3人で何とかするだろう?


あと、飲み水は・・・・用水路の水飲めるか?きっと飲むんだろうな。一応綺麗なはず・・・・


段取りを済ませ、俺は集団に声をかける事にした。


警戒するだろうから、向こうから見えるように近付く。俺一人で。


俺は手を振り、声をかける。


「ちょっと話がしたい、代表はいるか?」


ざわつく集団。あまりにも長いので、後ろまで伝わっていない。


前の人は・・・・俺の声で止まった。

そして・・・・そのうちの一人が、俺の所にやってくる。


「私が代表ですが・・・・あなた様はどちら様でしょうか?」


50代ぐらいの・・・・男性だな。背が高い。集団の・・・・こう言っては何だが、殆どの人が汚れ切った、服もボロボロ・・・・正直酷い有様なのだが・・・・その中にあって、この男性は・・・・服こそ汚れているが、比較的身ぎれいにしているようだ。


「その前に・・・・ここがどこか知っているのか?」


「はい・・・・知っていて此処に連れてきました。」


うん?今連れてきたと言ったな?


「じゃあ知ってるかもしれないが、念のために言っておくが、ここはラクシュアノス王国の新しい領地、クチタ領の”クチタ”という今拡大中の・・・・街になる筈の場所だ。そして俺が、此処の領主、口田士門だ。」


すかさず男性が土下座をする。


「知らぬとはいえ、とんだご無礼を。ご領主様とは存ぜず、無知な私をどうかお許し下さい。」


・・・・この人は・・・・何だか教養がある?


「ああ、別に無礼講でいいぞ・・・・俺はちょっと前までは普通の人で、領地なんか持ってなかったからな。それより・・・・・腹減ってるだろう?食べてかないか?」


「は?え?その・・・・私共は・・・・見た目の通り、貧乏なので・・・・何もお支払いが出来ませんが・・・・」


「いや、俺の善意?いや違うな・・・・俺の自己満足、つまりは・・・・先行投資だな。今向こうで用意させている。まあ食ってけ。あんたには色々聞きたい事があるのでな。水は・・・・何か用意するか?用水路の水が飲めれば・・・・」


「何という慈悲深き領主様でしょうか!皆感謝しなさい!そして・・・・用水路の水は・・・・申し訳ございません、道中既に飲んでしまいました。良質な水で、飲用に適しているので驚いてます。」


・・・・既に飲んでたのか。飲めるならいいか。


「なら・・・・先ずは向こうまで行けるか?病気や怪我で、症状の重い奴が居たら回復できるが、どうだ?金はとらん。もし疑うなら、病気を持ち込まれたら困るから、治療する、とでも思っておけばいい。」


「いえ!そこまでは流石に・・・・」


そう言ってる傍から、その男性の後ろで人が倒れる。


・・・・駄目じゃん!


「おい!まだ元気な奴はその倒れた人をこっちに運べ。あ、あんた名前はなんだった?まあいい、他の人を向こうへ連れてってくれ。もう動けなさそうな奴は、今すぐ面倒を見る。」


俺は急いでマットを取り出し、地面・・・・道にひく。そこに数人がかりで運んでもらい、寝かす。


・・・・若い女性かよ・・・・ぶっちゃけ、俺の回復魔法は・・・・直接肌に触れないと満足な効果が得られないんだよな・・・・


しゃーない、先ずは手を握ってするか・・・・

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る