第361話 演説

クチタという街の中の一画に、獣人達が集まっている。


その数、推定千人以上。


ラクシュアノス王国の実に8割ほどの獣人が集まった事になる。


未だかつてない事態に、俺は・・・・疲れ果てた。



何せ、一口に獣人と言っても、色んな種族があるらしく、エミリー達の様な犬の様な耳を持つ種族、猫の様な種族、熊や虎の様なのもいる。


中には相性の悪い種族もいるらしく、そこいらで喧嘩が耐えない。


「ごるああ!かかってこいや!!!」


「死にさらせやああ!」


・・・・こういった輩を見つけては、双方の頭を掴み、ぶつけてやる。


刃向かってくる奴もいるが、レベルの差はいかんともしがたく、俺は返り討ちにしてやり、ボコってそこいらに捨ておいてやる。まあ見せしめだな。このぐらいじゃあ死にはしないだろう?



そして、俺が誰か分かると、皆一様におとなしくなる。最初からおとなしくしててくれ!


これは一筋縄ではいかんぞ?


荒くれ共も多いが、家族で来た者、大人しそうな種族、真面目そうなのも勿論いる。


このままでは荒れる一方・・・・だが、平穏を求めやってきた獣人も多いだろう。むしろそちらの方が多いはず。


俺は皆を集め、大型スピーカーを設置し、用意した壇上に登り、皆に聞こえるようにしてから喋り出す。


「俺が此処の領主の、口田士門だ。国からは侯爵の地位と、此処一帯の領地を任されている。さて・・・・さっきボコった奴らを見たと思うが、今後あのような事をしたらもっとボコったうえで、此処から放り出す。あと、種族によって相性もあると思うが、此処ではみな公平な立場だ。万が一種族間の争いや差別等があれば、例外なくここから追い出す。特に仕掛けた側、最悪は種族そのものを追い出すから覚えておくように。」


周りがざわつく。まさかこんな事を言われようとは思ってなかっただろう。


「そして・・・・まさかこんなに来るとは・・・・実際俺はあんたらを呼んだ覚えは無いからな・・・・思ってもいなかったから、住居もほとんどない、仕事もない。だが・・・・折角来てもらったんだ、何とかしたいじゃないか。だが・・・・流石に俺一人では到底無理だ。なのでな・・・この中で住居を建てる事が出来る者がいると思うので、先ずは素材は用意できるから、自分達で建ててほしい。後は・・・・料理が出来たり、仕立てが出来たり、色々得意な事があるとは思うが、こちらの都合になるが、こちらの求めている事が出来るやつから仕事をしてもらう。中には冒険者として活動していた連中もいるだろう。領内にダンジョンがあるから、ダンジョンで素材を集めてほしい。」


一息つく。


「そして・・・・君達の世話は、同じ獣人のこの3姉妹に見てもらう。何かあればこの3人に意見を言うなり、報告するなりしてくれ。指示にも従ってもらう。」



ざわめくが・・・・取り敢えず反対意見はないようだ。どうやらこの3人の立場が分かっているようで、反論してくる奴はいない。


もっと逆らう奴がいると思ったが・・・・どうやら最初にボコったのを見て、それが抑止力になったようだ。


「じゃあ、代表でエミリーに話をしてもらう。」

俺はエミリーに壇上に上がってもらい話、をさせる。


「皆さん・・・・口田様はああ言っていますが、本心は皆に安心して暮らしてもらう事を望んでいます。人でありながら我々獣人を受け入れて下さりました。今は何もないこの場所ですが、10年後20年後には、国一番の獣人の・・・そして平和な町になれるよう、皆さんの協力を希望します。」


おお!いい事言うじゃないか。


獣人からは歓迎の拍手が沸き起こった。

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