第353話 治療成功

正直な所、俺はかなり疲弊していた。

主に精神が、だ。


エミリーは・・・・ものすごいドジっ娘で、それはもうドジでドジで・・・・なんだが、何事も一生懸命。真剣そのもの、まじめだし。


もう、何と言っていいのか・・・・放っておけないんだよな。


口の悪いナタリーも、おっとり?のんびりマイペースのソフィーもそうだが・・・・根はまじめで、一生懸命。

こういった女性が報われないなんて、何かが間違っている。

俺はそう思う。しかも・・・・獣人というだけで・・・・人の住む世界では、チャンスすら与えられない。

獣人の住む・・・・元々住んでいた場所はどうなってるのかは知らないが・・・・あまりにも理不尽じゃあないか?


そんな中、エミリーの足の治療を試みた。


治っていればいいが・・・・もし、万が一、失敗していたら?見た目は治っていても、筋肉、神経、血管・・・・医療の知識が無い俺には、もし万が一これらがうまく機能してなければどうなるか・・・・分からない。

筋肉や神経なら・・・・動けなくなったり、動けたとしても力が入らないとか・・・・これだけでも大問題なのだが・・・・だが、血管なら?最悪壊死してしまうんじゃないか?


普段から何もない場所でコケまくる彼女だが、それでも・・・・普通に生活はできたいたはず。

それが・・・・足が動かなくなったり、壊死して無くなってしまえば?



俺はそう思うと、急に恐ろしくなった。

思いあがって、何やっちゃってるんだ?と。

責任を取るとか思っちゃってるけど、どう責任取るんだ、とか。

もう震えた。心の底から・・・・震えた。


あれだけ魔物を屠り、御国台の転移者・・・・召喚者?の中で、人を殺しをした奴を殺しもした・・・・


その時はこんな事を思わなかったのに・・・・


俺は自室で独りこんな事を考えて引きこもってしまってる訳なんだが・・・・


ひたすら震えが止まらない。


もし、ナタリーが、姉貴の足が動かねえ!とか言って駆け込んできたら?

ソフィーが、お姉さまの足、変色してるんですぅ・・・・どうしましょう・・・・とか言ってきたら?

俺は逃げ出したくなった。


そして・・・・恐ろしい瞬間がやってきた。

部屋を誰かがノックをしたのだ。

俺は・・・・頭が真っ白になった。

目の前が真っ暗になって・・・・気が付けば、泣きじゃくっているエミリーに抱き抱えられていた。


ああ・・・・ごめんよエミリー、俺、失敗したんだな・・・・だから、泣いてるんだよな・・・・俺は何て事をしてしまったんだ・・・・


俺は意識を手放した。

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